【完】ヴァンパイア、かなし
「赤嶺先輩、今日は相方は一緒じゃないんですね」


「相方……?ああ、荘司のことか。あはは、四六時中一緒にいるわけないだろ、むさ苦しい」


むさ苦しいどころか、寧ろ赤嶺先輩と満島先輩の並びは爽やかさすら漂っているというのに、本人達からすれば、そう思うものなのか。


僕は誰かと共にいることに慣れていないから、その感情は分からない。そういうものなのだろうと理解は出来るけれど。


「普通、男女というものは共に過ごせば愛情が芽生えるものだと思っていましたが、先輩方はそうじゃないのですか?同級生達も、お二人はお付き合いされていると思ってますが」


「ぶはっ……!荘司と、私が?それは考えられないな。あれとは物心つく前から一緒にいるから家族みたいなものでな。昔は三人で……いや、その話は無しにしよう」


三人で、というのは、おそらく満島先輩が話していた、僕と同じ白皮症の人間を差しているのだろう。


そのことは詳しくは聞いていないから分からないが、その人間のことを話そうとして止めた赤嶺先輩の顔は、酷く悲しそうな顔で、凛とした横顔は悲しみで染まっているように見える。


何でか、その顔を見て本能的に思った。この人のこんな顔は、あまり好きではない、と。
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