【完】ヴァンパイア、かなし
僕は、この人のことを愛おしいと思っているのか?否、そんなはずは無い。ただ、これまで関わったことのない人に触れて、驚いているだけだ。


「エルザ、君の目は、綺麗だな。薔薇のようだ。あいつも、そうだったよ」


悲しげだった表情は、彼女のその例えられない柔らかな肌に引けを取らない柔らかな表情で、僕の中の化け物が、加速する。


「あまり、見ないで下さい……」


それをどうにか抑える為に彼女の顔から目を逸らすと、彼女の柔らかさが、温もりが、そっと僕から離れていった。


「すまない。……君からしてみたら嫌な病気だよな。それに、君はあいつを知らないのに」


「大丈夫、です。僕と同じ白皮症の幼なじみがいたということは、少しだけ満島先輩に聞きましたから」


まだ血を求めてふらふらする視界と加速した心臓を何とか抑え込んで赤嶺先輩に返せば、彼女は瞬きを二回して、今度は困ったように微笑んだ。


「お喋りな奴だな、荘司は」


「その、話したくなければ答えなくて結構なので一応聞きますが、その方とは、もうご友人では無くなったのですか?……お二人は、過去のようにそのことを話す、から」


誰かの事に興味を持つ日が来るなんて思わなかった。けれど、聞かずにはいられい。
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