【完】ヴァンパイア、かなし
僕の質問に、赤嶺先輩は困ったような微笑みから、顔を徐々に歪ませる。


それをどんな感情かと例えるのなら、多分憎しみと、悲しさと、悔しさがぐちゃぐちゃに混ざった、そんな感情なのだろう。


「友達では無くなったどころか、もう、この先もっと仲を深めることも、喧嘩もすることも、叶わない」


ぷるりとした桃色の唇は、今にも血が出てきそうな程に赤嶺先輩の前歯に噛み締められている。


痛そう、と同時に、この人の血を見てしまったら、今、貧血の続く僕は狂ってしまうのでは無いか、と怖くなってしまう。


そんな僕に気づくでもなく、赤嶺先輩は、高くは無いがハリのあるその声で、告げた。


「あいつは、殺されたよ。知らない大人達にもみ消されてしまったが、私や荘司だけは、そのことを覚えてる」


「ころされ、た……？」


何だか最近、やたら周りの人間が死ぬとか殺すとか殺されるとか、非現実的な言葉を口にする。そんな客観的な事を考えてしまう僕は、やはり少し薄情なのかもしれない。


そう思っているうちに、赤嶺先輩はまた、言葉を空気に落とし込む。


「ああ……信じられないかもしれないが、人間じゃない化け物にな」


なんだか非現実的なその単語達は、実は全て繋がっているんじゃないのか、何て、そんなことすら、思えてきてしまう。
< 55 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop