【完】ヴァンパイア、かなし



社会科の資料はどうやらあいつ一人が頼まれた仕事ではなく、数人が頼まれたものだったらしい。


一人で持つのはかなり苦労するけれど、往復するには距離がありすぎる。


長身な方の僕でさえ視界が狭まる程のその資料を足をふらつかせながら運ぶ。


放課後で、廊下を歩く生徒がかなり少ないのが救いだ。


耳を澄ますと外から部活をやっている声が微かに聞こえ、僕のささやかな日常の幸せを盛り上げてくれる。


この音が、この空気が、僕が何者でもないことを告げているみたいで幸福感をもたらす。


「どわぁぁ!和真、危ねぇ!」


「じゃあ止まれ!そして謝れ!」


そんな静かに流れる日常の中に、突風のような大声が突如、響き渡る。
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