【完】ヴァンパイア、かなし
本能的に、このままじゃ何かが自分に衝突する、と思った。


現実のヴァンパイアは、空は飛べないけれど運動能力は従来の人間より高い。


僕はそれすらも普段は隠して生きているのだけど、反射的にその危機を回避する為に、体を左に動かした。


「あ……危ない!」


「え……なっ!?」


しかし、その危機を回避した次に、思わぬものに被弾してしまう。


スコーン、と軽い音と共に視界を狭める資料に軽い衝撃を受ける。


その軽い衝撃は資料にとっては重たいもので、二次災害で微妙なバランスを取っていた資料達が、空中に舞う。


資料達は重力に逆らうことなく僕に降り注ぎ、僕は硬い廊下へとバランスを崩し、そのまま尻餅を突いた。


「うっ……」


「すまない!君、大丈夫か?」


僕に降りかかる衝撃を全て受けきり、声変わり前の少年のような張りのある声に、強く閉じていた瞼をうっすらと開いた。
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