【完】ヴァンパイア、かなし
そんなことが土曜日にあり、僕は二人の入れ知恵通り、おどおどするのを止めて二人を下の名前で呼ぶようになった。
「エルザパイセン二人とどんなことがあったからそんな親しげなわけ?」
「そのパイセンって止めて。意味が分からない。何だか僕も流れのままに友達にされたんだ。一応、学年が二つ上だから先輩とは呼ばせて貰っているけれど」
入れ知恵通りに振る舞ってみると、意外とこれまでよりも気持ちが楽になる。
僕は彼等と目線を合わせることなく机に筆箱とノート、それから教科書を準備しながら答えた。
「パイセンはパイセンだろー?変わってるよな、お前」
「……母が話していた日本語にはそのような語録は無かったから分からないんだ」
「えっ、じゃあ外国からこっちに来たって噂マジなんだ!すげー」
あまり感心が無いように振る舞っても、めげる事無くコミュニケーションを取ろうとして来る彼等は確かに和真先輩の言う通り単細胞なのかもしれない。
「お前ら席に着けー。今から文化祭の出し物の話し合いだ」
そうしているうちに担任がやって来て、彼等は散り散りに自分の席へと戻って行く。
面倒だと思っていたクラスメイト達との交流は、思ったよりも難しくないものなのかもしれない。
もし和真先輩や荘司先輩と交流を計っていなかったら、僕は一生その事に気づかぬままだったのだろう。
プラスであるかマイナスであるかは別として、彼等との交流は、思っていたより不愉快ではないということも。