【完】ヴァンパイア、かなし

そこに立っていたのは、艶やかな黒髪を高い位置で結った、凛とした少女。


その長い黒髪は日本人形のように黒々としていて、眉毛にかかった前髪の下にある大きな目は、目尻がキュッと上がって彼女の凛々しさを際立たせている。


可愛らしいというよりは、綺麗で、正に高嶺の花というような印象だ。


目線を手元に落とすと、そこには爪先が青色のスリッパが片足分転がっていて、これが衝撃の正体だと物語っていた。


達筆な文字で書いてある『赤嶺』という名前に、僕はもう一度彼女の顔を見る。


「本当にすまない。怪我、してないか？」


彼女は間違いなく、この学校という小さな人間社会のピラミッドの最上層の住人、応援団団長を務めた、赤嶺和真（あかみね・かずさ)先輩だ。