【完】ヴァンパイア、かなし
学校は、中庭に植えられた楓が赤とオレンジの紅葉に染まるに比例して、文化祭の色に染まって行く。
「あの、エルザ君……採寸、今大丈夫?」
天気のあまり良くない今日は、昼休みを教室で文庫本片手に過ごしていた。
懐かしいイタリア語の羅列から視線を上げると、クラスメイトの女子が二人、頬を赤らめてもじもじしながら僕の前に立っている。
同じ女子でも和真先輩とは全然違う動きをするものだ。彼女はいつも背筋をしゃんと伸ばし、自信に満ちた凛とした顔で僕をまっすぐ見つめる。
比較するのはおかしな事かもしれないけれど、僕が彼女達を比較するのに頭に浮かぶ同年代の女子は、和真先輩くらいしか思い当たらないから仕方の無い事かもしれない。
「うん。構わないよ」
そんな事を考えていると、自然と笑みがこぼれて、柔らかな表情と声で彼女達に答えると、彼女達は更に頬の赤らみを広げた。
ああ、同じ人間、同じ女子でも、頬の赤らめ方も和真先輩とは違うのか、なんておかしな事を思いながら立ち上がる。