【完】ヴァンパイア、かなし


クラスメイトに保健室まで付き添ってもらい、僕はベッドの上にいた。


僕が保健室に行くと、決まって先生は不在にしていることが多い。


薬品の香りが漂うこの空間に一人きりは、なんだかあまり心が落ち着かないが、誰かといるよりは今はこの方が楽である。


そういえば、体がしんどくなったり立ちくらみが来た時に、摂血パックを飲みなさいと母親に言いつけられていた。


いつもは中庭で、少し疲れた段階で摂取していたから今日はそのタイミングが遅れて酷い症状に見舞われたのだろう。


パンツの右ポケットに持っていたパックを取り出し、僕は週に二、三度から一日二度に増えたそれを、ひとりぼっちで執り行う。


黒いパックからチューブを通り、体に血液が廻る。蒸気を発し、肌は日焼け止めを蒸発させほ本来の乳白色に戻し、僕を、化け物へと戻して行く。


生きる為のこの行為が、人間としての僕を殺して行く。人と関わる温もりを知った僕は、この行為自体が僕を丸焦げにしてしまうような気がした。
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