幼馴染みはイジワル課長

ありがとう

あれ…真っ暗だ……

何も見えない…

瞬きをしてる感覚はあるけど何も見えない…



私は死んだの?


川に落ちて…あのまま溺れたのかな……








「あれ…」


段々と辺りが薄暗くなってきて視界が見えて来た…


真っ白い壁と天井の部屋に小さいなスタンドライトがあるような感覚で、光はなんだかグレーかかった色をしているように見える。


狭いのうで奥行のあるような不思議な空間…

近くには何も無い。

けれども気味が悪いとは思えわなかった。

体は重力がないと思えるくらい軽く、頭はふわふわとしていて心地いい。


死とはこういうことなのか…

まだよくわからない。








「……ん?」


しばらく前に進むと、中央に真っ白な木製のベンチが見えてきた。

二人掛けくらいのサイズのそのベンチは、そこだけまるでスポットライトを当てているように明るく照らされている。


私はそこに座れと言われているかのように、吸い込まれるようにそのベンチに近づく。

そしてベンチの右端に腰掛けると、膝を揃えてぼんやりと辺りを眺めた…





頭がうまく働いている感じがしない。

寝起きみたいだ…


いや…

これは夢の中…?




ううん、なんでもいいよ…



どうせ私はもう死んでるんだから…








タン…








タン…タン………








どこからともなく聞こえてくる音。

何の音なのかよくわからないけど、私は音のした方向にゆっくりと目を向けた…






「…」





私から少し離れた所に、高校生くらいの女の子が立っている。

その女の子の背丈や髪型、着ている服まで見覚えがあった…そして、その子の顔を見て確信した…







「梨絵…」





そこには…亡くなった私の幼馴染みの梨絵が立っていた…

びっくりして思わず立ち上がると、梨絵はにっこりと笑って私に近づいてくる。



何も変わってない。

梨絵は亡くなったあの時の歳のまま…







「久しぶり…桜花」


話す声まで昔のまま。



梨絵が生き返ったってこと…?

いや、私が死んだから梨絵に会えたってことになるのかな…

突然の梨絵の登場でぼんやりとしていた頭が急にはっきりとしてきて、まるで夢から覚めたみたいだ。


ベンチに腰掛ける梨絵を見て、少し躊躇しながらも私もまたゆっくりと座った。







「桜花…変わったね」






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