幼馴染みはイジワル課長
「今の…部長はえらい大根役者だけど、課長に至っては名役者だね」
小声で苦笑いをする歩未ちゃんに、私はポリポリと頬をかいた。
「昨日事前に打ち合わせしたの…私が退院して会社に出勤した時に、部長と課長が妙に優しくしてくれたら不自然だから、出来るだけ自然してようって」
「なるほど…」
部長は演技にちょっと無理があったけど、碧は完璧だったな。
逆にうますぎて、演技ってわかってるのに胸にグサッと突き刺さったよ…
課長としての碧なら、いくら病み上がりの部下にでもあれくらいのこと平気で言いそうだしね…
「そろそろ朝礼を始めます」
部長の声がかかり、私はスイッチを入れ替えて気合を入れた。
久しぶりの出勤だし…ちゃんとしなきゃ。
その日はノーミスとまではいかなかったが、いつもよりも気を引き締めて仕事できてとてもいいスタートだった。
先輩や同僚達が褒めてくれた。
「乾杯ー!」
その日の夜。約束していた通り、私は歩未ちゃんと会社近くの居酒屋に来ていた。
本当は碧と部長も誘おうと思ったのだが、今日は取引先の上司と接待があるらしい…
久しぶりの女子会だし楽しもうということで、私と歩未ちゃんはお互いにビールのジョッキを頼んで乾杯した。
「桜花ちゃんの退院祝いだね!」
ビールジョッキをテーブルに置くと、歩未ちゃんはお通しのおひたしに手を伸ばす。
「本当だね!ありがとう」
唇の上についたビールの泡を舌で舐めたあと、私はおしぼりで口を拭いた。
「今日は私のおごりだから好きなだけ食べてよ!」
「え?」
歩未ちゃんは私にメニュー表を開いて見せて来た。
「私にはこんな事しか出来ないから…」
「…」
少し目を潤ませる歩未ちゃんに、私はメニューを閉じて言った。
「歩未ちゃん…もう自分を責めるのはやめて。私だって無事に退院して、こうやって仕事復帰できたんだから」
一番伝えたかった事を言えた。
今日歩未ちゃんを飲みに誘ったのは、これが言いたかったから…
「だけど…桜花ちゃんは私のせいで…」
ポロポロと泣き始める歩未ちゃんに、私はカバンからハンカチを出してそっと手渡した。
「歩未ちゃんのせいじゃないよ。あれは事故だったの…もう終わったことだから」
「だけど…」
「正直…今の歩未ちゃんと話してても楽しくないよ。前みたいに話したい、前みたいな歩未ちゃんに会いたいよ」
「桜花ちゃん…」
気がつくと私も涙が溢れていて、鼻をすすったあと涙を指で拭った。
「じゃあ…お言葉に甘えて~今日は歩未ちゃんにおごってもらおうかな♪」
私はそう言って、泣きながらビールをぐびぐびと飲んだ。
「それで全部チャラね♪」
「…」
そう笑顔を向けると、歩未ちゃんは涙を流しながらふわっと微笑んだ。
そして「ありがとう」と言って涙をそっと拭いた。
「最近部長とはどう?うまくいってる?」
散々2人で泣いた後は、つまみをたくさん注文して一通り飲み始めた私達…
会話は歩未ちゃんの恋愛話に。
「…前よりは会う回数減ったけど…続いてるは続いてるよ」
「離婚の方は進んでるの?」
「うん。奥さん…病院に入院するみたいだよ。今の状態だと普通に生活するのは無理だって」
「そう…」
碧から聞いた話だと、元々精神的に弱いところがある人みたいだから…
今回のことでかなり参っちゃったのかな…
これから大変かもしれないけど、病院でゆっくり休んだ方がいいよ。
「奥さんの入院が決まったら離婚するみたい…向こうも今回の事故があってから、すごく反省して前向きになってくれたみたい…申し訳ないけど…有難いよ。奥さんの為にも私もちゃんとしなきゃ」
「そうだね…」
小声で苦笑いをする歩未ちゃんに、私はポリポリと頬をかいた。
「昨日事前に打ち合わせしたの…私が退院して会社に出勤した時に、部長と課長が妙に優しくしてくれたら不自然だから、出来るだけ自然してようって」
「なるほど…」
部長は演技にちょっと無理があったけど、碧は完璧だったな。
逆にうますぎて、演技ってわかってるのに胸にグサッと突き刺さったよ…
課長としての碧なら、いくら病み上がりの部下にでもあれくらいのこと平気で言いそうだしね…
「そろそろ朝礼を始めます」
部長の声がかかり、私はスイッチを入れ替えて気合を入れた。
久しぶりの出勤だし…ちゃんとしなきゃ。
その日はノーミスとまではいかなかったが、いつもよりも気を引き締めて仕事できてとてもいいスタートだった。
先輩や同僚達が褒めてくれた。
「乾杯ー!」
その日の夜。約束していた通り、私は歩未ちゃんと会社近くの居酒屋に来ていた。
本当は碧と部長も誘おうと思ったのだが、今日は取引先の上司と接待があるらしい…
久しぶりの女子会だし楽しもうということで、私と歩未ちゃんはお互いにビールのジョッキを頼んで乾杯した。
「桜花ちゃんの退院祝いだね!」
ビールジョッキをテーブルに置くと、歩未ちゃんはお通しのおひたしに手を伸ばす。
「本当だね!ありがとう」
唇の上についたビールの泡を舌で舐めたあと、私はおしぼりで口を拭いた。
「今日は私のおごりだから好きなだけ食べてよ!」
「え?」
歩未ちゃんは私にメニュー表を開いて見せて来た。
「私にはこんな事しか出来ないから…」
「…」
少し目を潤ませる歩未ちゃんに、私はメニューを閉じて言った。
「歩未ちゃん…もう自分を責めるのはやめて。私だって無事に退院して、こうやって仕事復帰できたんだから」
一番伝えたかった事を言えた。
今日歩未ちゃんを飲みに誘ったのは、これが言いたかったから…
「だけど…桜花ちゃんは私のせいで…」
ポロポロと泣き始める歩未ちゃんに、私はカバンからハンカチを出してそっと手渡した。
「歩未ちゃんのせいじゃないよ。あれは事故だったの…もう終わったことだから」
「だけど…」
「正直…今の歩未ちゃんと話してても楽しくないよ。前みたいに話したい、前みたいな歩未ちゃんに会いたいよ」
「桜花ちゃん…」
気がつくと私も涙が溢れていて、鼻をすすったあと涙を指で拭った。
「じゃあ…お言葉に甘えて~今日は歩未ちゃんにおごってもらおうかな♪」
私はそう言って、泣きながらビールをぐびぐびと飲んだ。
「それで全部チャラね♪」
「…」
そう笑顔を向けると、歩未ちゃんは涙を流しながらふわっと微笑んだ。
そして「ありがとう」と言って涙をそっと拭いた。
「最近部長とはどう?うまくいってる?」
散々2人で泣いた後は、つまみをたくさん注文して一通り飲み始めた私達…
会話は歩未ちゃんの恋愛話に。
「…前よりは会う回数減ったけど…続いてるは続いてるよ」
「離婚の方は進んでるの?」
「うん。奥さん…病院に入院するみたいだよ。今の状態だと普通に生活するのは無理だって」
「そう…」
碧から聞いた話だと、元々精神的に弱いところがある人みたいだから…
今回のことでかなり参っちゃったのかな…
これから大変かもしれないけど、病院でゆっくり休んだ方がいいよ。
「奥さんの入院が決まったら離婚するみたい…向こうも今回の事故があってから、すごく反省して前向きになってくれたみたい…申し訳ないけど…有難いよ。奥さんの為にも私もちゃんとしなきゃ」
「そうだね…」