幼馴染みはイジワル課長
「やっぱり緊張してんだろ?俺がいるから大丈夫だよ」


また優しい顔を向ける碧。ハンドルから片手を離して、今度は私の後ろ頭の方を撫でてそのまま指先に髪を絡ませてくる。


これは…どういう状況なのかな…

撫でられてるのかそれとも髪を触られてるのか…





「昔から髪質変わんねえな…細くてふわふわ…」

「そお?」


子供の時からの私の髪質を覚えてる碧。


碧は私のことを少しでも異性として見てるのかな…確かめるにはどうしたらいい…?






ぎゅ…


勇気を振り絞って碧に髪を触られてる手にそっと手を添えてみる。心臓が飛び出そう…碧に……いや、男の人にこんなことしたのは初めてだ。

少し怖かったが碧の表情を伺ってみると、碧は驚いた顔をしたあと私の髪からからそっと手を話した。





「…ごめん」

「ううん…」


ボソボソと声を出して謝ったあと、碧はまたハンドルを握って前を向いた。




謝られちゃった…嫌がってるみたいに見えたかな…失敗したかも。


しなければ良かったと後悔し私の気持ちはしょぼんと沈んでいった。そしてなんだか気まずい空気のまま取引先のオフィスに到着した。






「うわ大きい…立派なビルですね」


着いた場所はかなり大きな高層ビルで、ざっと見ただけで20階くらいはある高さ。外観もおしゃれできれいで自分の会社のオフィスとは比べ物にならない。

駐車場に車を止めて、課長と2人でオフィスビルよ入り口に入りロビーへ入る。

課長は真っ直ぐに受付に向かい、取引先のオフィスにアポの確認をしてもらっている様子。私はそこから離れた場所でロビーをキョロキョロと見渡す。




中もきれいだなぁ、天井も高い……

それになんか高そうなツボとか立派な生け花が飾ってある。しかも今課長が話してる受付嬢もすごいレベル高いし、仕事できるって感じ…





「エレベーターで6Fに行くぞ」

「はい」


アポが確認できてこっちに戻って来る課長の後を、私は緊張しながらついていく。そして大理石の床をそっと歩きながら、落ち着いたグレーの色のエレベーターのボタンを押す。



始めて足を踏み入れた場所。こんな世界があるなんて今まで全然知らなかった。

まるでこの歳になってから社会科学しているみたいだ。このビルの中にある一つ一つのものも、私から見ればすごく新鮮に映る。
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