幼馴染みはイジワル課長
碧の眼鏡姿にドキッとして思わず持っていた資料を落としてしまった私。スクリーンの機械に手を伸ばしていた課長が、私が資料を落としたのを見て課長は鬼のような顔をしてこっちを振り向いた。




「お前…大事な会議の前なんだからちゃんとしろよ」

「ご、ごめんなさいっっ」


しゃがみ込んですぐに資料を拾う。頭の中は恐怖とドキドキが入り交じってよくわからないことになっている。





「…ったく、本当にドジだな」

「あ…」


眼鏡をかけた課長が私の隣に来て、床に散乱した資料を拾うのを手伝ってくれる。その横顔を一瞬見ただけでも胸がキュッとなるくらいかっこいい。




「ぼーっとしないでお前も拾え」

「は、はいっ」


課長は色んな所に目が付いているのか、資料を拾いながらこっちを見ていなくても私の手が厳かになっているのが見えたようだ。



口調は厳しいけど碧はやっぱり優しい…

眼鏡をかけてより一層見た目は怖く見えるけど、それもまたいいかも。




「ん、これで全部だな。早く並べろよ」

「はい!ありがとうございました」

「その前に…お前。ちょっとそこに立て」

「え…」


資料をテーブルに並べようとする私を引き止めて、課長は私に指を差した。その顔は険しくこれから怒られるということはなんとなくわかった。

私は覚悟しながら資料を一旦テーブルに置き、課長の前で背筋をはる。課長は自分の顎の辺りを触り、時々ため息をつきながら私を上から下まで見てくる。






「お前スカートが短い。それに胸元も出し過ぎ」

「え?そうですか?」

「取引先にそんな格好で来るなんて…お前もしかして他の社の男にアピールしてるのか?」

「ちちち違いますっ!!そんなこと考えてません!」


そんなにスカート短いかな?膝より少し上程度だしそれに胸元だってそこまで強調してない。うちの会社の他の社員の方がもっと露出してるよ!





「せめて会議中だけでも何とかしろ。俺の部下としているんだから恥をかかせるな」

「はい…」


私は資料を並べ終えた後で課長に言われた通りスカートのフックを緩めて下げ、上に着ているワイシャツのボタンの一番上を全部しめた。



う…1個しか開けてなかったボタンをしめると苦しい…それに堅苦しい感じが…

でも課長に怒られるからちゃんとやらないとな…






ガチャ…



準備が整った所で会議室のドアが開き、クライアントの上司がぞろぞろと入って来た。私はピシッと背筋を正して課長の横に立つ。




「真田くん。ご無沙汰してます」

「いつもお世話なっています。今日はよろしくお願い致します」


風格のあるクライアントの男性社員と課長が挨拶をする。私も課長の隣で必死に頭を下げる。




「真田くんの部下ですか?」

「はい。部下の澤村と申します」


課長が私を男性社員に紹介すると、私はやや緊張しながら口を開いた。




「部下の澤村と申します!どうぞよろしくお願いします!!」

「美人で元気な部下ですな。私もこんな部下を持ちたいよ」

「ハハハ」


こういうノリにはどう返したらいいのかわからなかったが、とりあえず笑うしかない。

それから少し雑談をすると男性社員は席につき、私はカチンコチンになり頭は真っ白の中課長はとても落ち着いている。



どうしてこんなに平然としていられるんだろう…課長ってやっぱりすごいなぁ…
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