幼馴染みはイジワル課長
決意
「うぅ…ひっく……」
子供のように泣いて体を震わせる歩未ちゃんに、私はそっと手を離して自分の着ているスーツの上着を脱ぎ歩未ちゃんに羽織らせた。
歩未ちゃんはゆったりとした腕の見えるシャツに、膝下くらいのパンツ姿だった。
なんでこんな薄着なんだろう…いくら夏が近いっていってもこれじゃあまだ肌寒いよ。
ス…
「あ…」
すると碧が後ろから自分のスーツの上着を私に羽織らせてくれて、地面に転がっている歩未ちゃんのカバンを拾って叩いてくれる。
「とりあえず家に入った方がいい…」
「そう…ですね」
歩未ちゃんの前という事もあり私はとっさに碧に敬語を使った。そして泣いている歩未ちゃんの手を引いて家の中に入り、ひとまず歩未ちゃんをリビングのソファーに寝かせる。
「…部長と別れたなんて…つい最近まであんなにラブラブだったのに」
一旦落ち着いた歩未ちゃんから離れ、碧と私はリビングを出て玄関で小声でそう言った後で私はしまった!と思い口を手で塞いだ。
碧は歩未ちゃんと部長が不倫してること知らなかったんだ!まずい!ついポロッと出ちゃったよ…
「一応言っておくけど…俺もあの2人の関係知ってるから安心しろ」
「え!知ってたの?どーして?」
「…部長から聞いてたから」
なんだ…部長と碧って結構仲いいのか。そういえばよくランチとか飲みに行ったりしてるんだよね。
「遅かれ早かれこうなる日が来るのは部長も山城もわかってたはずだ…」
「そうだけど…やっぱり悲しいよ」
話はやはり歩未ちゃんと部長のこと。不倫はいけないことだけど私はどこかで部長は最後には歩未ちゃんを選んでくれるって信じていたのかもしれない…
そんなの簡単にはいかないことだってわかってたけど…心のどこかで歩未ちゃんが部長と幸せになることを望んでた。
「何でお前が泣くんだよ」
「だって…」
気がつくと私の目からは涙が…
大好きな人にフラれる事ってどんなに辛いだろう…歩未ちゃんがどれだけ部長の事が好きかわかってたから歩未ちゃんの立場になると胸が痛いよ。
「お前が泣いてたら山城も更に悲しくなる…だから我慢して今夜は山城の側にいて気の済むまで話聞いてあげろ」
「うん…」
私の頭をポンと撫でる碧。私は涙を拭いてふうと息を吐いた。
「じゃあ俺は帰るから…何かあったら連絡して」
「え?泊まっていくんじゃないの?」
「…山城がいるのに俺がお前の家に泊まるのは不自然だ。それに山城だって俺がいたら部長の事話しにくいだろ」
「あ…そっか」
そうだよね…私は碧を見送ろうと2人で玄関を出て、羽織っていた碧のスーツの上着を脱いだ。
「これありがとう」
「ああ…」
私から上着を受け取ると、碧は上着を軽く畳んで手に持った。
「今日はごちそうさま。どうもありがとう、楽しかったよ」
長い時間碧と過ごせて楽しかったし、幸せだった。
「…俺もだよ」
「えっ…」
さらっと言う碧にドキッとしてしまうが、すぐに切り替えて平然を装う。
「…さっも言ったけど何かあったら連絡しろ」
「うん、わかった」
さっきの帰り道で連絡先交換したもんね。私からすれば何かなくても連絡したいくらいだよ。
「もう中入れ」
「…いい。そこまで見送るよ」
「入れ」
「…もう…わかった」
ちょっと強い口調で言う碧に、私は渋々返事をして玄関のドアを開けた。
「…おやすみなさい」
「ああ。ちゃんと戸締りしろよ」
「うん」
ドアが閉まる瞬間まで碧を見つめ、家の中に入って鍵を閉めチェーンをした。
帰った碧を気にかけつつリビングへ戻ると、ソファーに寝ていると思っていた歩未ちゃんは起き上がっていて下を俯いたまま座っていた。
私がそっと近づくと歩未ちゃんはゆっくりと顔を上げる…
「ごめんね…突然押しかけちゃって……本当に…ごめんなさい」
「いいのいいの!うちの両親ちょうど旅行中でいないんだ~だから遠慮しないで!良かったら今夜泊まっていきなよ」
私の言葉に歩未ちゃんは涙を流しながらニコッと笑った。その笑顔が痛々しかった…
「歩未ちゃん夜ご飯食べた?」
「…食べてないけど…今日は食べられそうにないや」
「そっかぁ。じゃあ一緒にお風呂入らない?いい入浴剤あるんだ♪着替えも貸すし!」
「………うん」
私はバスルームに行き浴槽にお湯を溜め、歩未ちゃんとお風呂に入った。
「これいい香りでしょ?しかもすごい肌つやつやになるんだよ」
「そうなんだ…」
歩未ちゃんとちょうどいい湯加減のお湯に浸かりながら、私は何事もなかったようにいつも通りに振舞っていた。
涙は止まった様子の歩未ちゃんだったが、元気はなく1日会っていないだけなのになんだかげっそりとしている風に見えた。
「…本当にごめんね。でも桜花ちゃんにしか部長の事話せる人がいなくて…」
膝を抱えてお湯に浸かる歩未ちゃんは、申し訳なさそうに言った。
「全然大丈夫だよ…謝らないで」
「地元の仲いい友達はね、私が不倫してる事打ち明けたら皆ドン引きでさ…最近は遊びにも誘われなくなっちゃった…仲間だと思ってたのにな…」
「歩未ちゃん…」
悲しそうな顔をする歩未ちゃん。私は少し迷ったが勇気を出して言った。
「あの、さ…私で良かったら話聞くよ。もし話せるなら…話して?そしたらほんのちょっとは楽になるかもしれないし…」
「…」
歩未ちゃんは黙り込み私から目をそらした。
「ご、ごめんね!話したくないよね…やっぱりそういうのは…」
「部長ね…奥さんの所戻るって」
「え…」
子供のように泣いて体を震わせる歩未ちゃんに、私はそっと手を離して自分の着ているスーツの上着を脱ぎ歩未ちゃんに羽織らせた。
歩未ちゃんはゆったりとした腕の見えるシャツに、膝下くらいのパンツ姿だった。
なんでこんな薄着なんだろう…いくら夏が近いっていってもこれじゃあまだ肌寒いよ。
ス…
「あ…」
すると碧が後ろから自分のスーツの上着を私に羽織らせてくれて、地面に転がっている歩未ちゃんのカバンを拾って叩いてくれる。
「とりあえず家に入った方がいい…」
「そう…ですね」
歩未ちゃんの前という事もあり私はとっさに碧に敬語を使った。そして泣いている歩未ちゃんの手を引いて家の中に入り、ひとまず歩未ちゃんをリビングのソファーに寝かせる。
「…部長と別れたなんて…つい最近まであんなにラブラブだったのに」
一旦落ち着いた歩未ちゃんから離れ、碧と私はリビングを出て玄関で小声でそう言った後で私はしまった!と思い口を手で塞いだ。
碧は歩未ちゃんと部長が不倫してること知らなかったんだ!まずい!ついポロッと出ちゃったよ…
「一応言っておくけど…俺もあの2人の関係知ってるから安心しろ」
「え!知ってたの?どーして?」
「…部長から聞いてたから」
なんだ…部長と碧って結構仲いいのか。そういえばよくランチとか飲みに行ったりしてるんだよね。
「遅かれ早かれこうなる日が来るのは部長も山城もわかってたはずだ…」
「そうだけど…やっぱり悲しいよ」
話はやはり歩未ちゃんと部長のこと。不倫はいけないことだけど私はどこかで部長は最後には歩未ちゃんを選んでくれるって信じていたのかもしれない…
そんなの簡単にはいかないことだってわかってたけど…心のどこかで歩未ちゃんが部長と幸せになることを望んでた。
「何でお前が泣くんだよ」
「だって…」
気がつくと私の目からは涙が…
大好きな人にフラれる事ってどんなに辛いだろう…歩未ちゃんがどれだけ部長の事が好きかわかってたから歩未ちゃんの立場になると胸が痛いよ。
「お前が泣いてたら山城も更に悲しくなる…だから我慢して今夜は山城の側にいて気の済むまで話聞いてあげろ」
「うん…」
私の頭をポンと撫でる碧。私は涙を拭いてふうと息を吐いた。
「じゃあ俺は帰るから…何かあったら連絡して」
「え?泊まっていくんじゃないの?」
「…山城がいるのに俺がお前の家に泊まるのは不自然だ。それに山城だって俺がいたら部長の事話しにくいだろ」
「あ…そっか」
そうだよね…私は碧を見送ろうと2人で玄関を出て、羽織っていた碧のスーツの上着を脱いだ。
「これありがとう」
「ああ…」
私から上着を受け取ると、碧は上着を軽く畳んで手に持った。
「今日はごちそうさま。どうもありがとう、楽しかったよ」
長い時間碧と過ごせて楽しかったし、幸せだった。
「…俺もだよ」
「えっ…」
さらっと言う碧にドキッとしてしまうが、すぐに切り替えて平然を装う。
「…さっも言ったけど何かあったら連絡しろ」
「うん、わかった」
さっきの帰り道で連絡先交換したもんね。私からすれば何かなくても連絡したいくらいだよ。
「もう中入れ」
「…いい。そこまで見送るよ」
「入れ」
「…もう…わかった」
ちょっと強い口調で言う碧に、私は渋々返事をして玄関のドアを開けた。
「…おやすみなさい」
「ああ。ちゃんと戸締りしろよ」
「うん」
ドアが閉まる瞬間まで碧を見つめ、家の中に入って鍵を閉めチェーンをした。
帰った碧を気にかけつつリビングへ戻ると、ソファーに寝ていると思っていた歩未ちゃんは起き上がっていて下を俯いたまま座っていた。
私がそっと近づくと歩未ちゃんはゆっくりと顔を上げる…
「ごめんね…突然押しかけちゃって……本当に…ごめんなさい」
「いいのいいの!うちの両親ちょうど旅行中でいないんだ~だから遠慮しないで!良かったら今夜泊まっていきなよ」
私の言葉に歩未ちゃんは涙を流しながらニコッと笑った。その笑顔が痛々しかった…
「歩未ちゃん夜ご飯食べた?」
「…食べてないけど…今日は食べられそうにないや」
「そっかぁ。じゃあ一緒にお風呂入らない?いい入浴剤あるんだ♪着替えも貸すし!」
「………うん」
私はバスルームに行き浴槽にお湯を溜め、歩未ちゃんとお風呂に入った。
「これいい香りでしょ?しかもすごい肌つやつやになるんだよ」
「そうなんだ…」
歩未ちゃんとちょうどいい湯加減のお湯に浸かりながら、私は何事もなかったようにいつも通りに振舞っていた。
涙は止まった様子の歩未ちゃんだったが、元気はなく1日会っていないだけなのになんだかげっそりとしている風に見えた。
「…本当にごめんね。でも桜花ちゃんにしか部長の事話せる人がいなくて…」
膝を抱えてお湯に浸かる歩未ちゃんは、申し訳なさそうに言った。
「全然大丈夫だよ…謝らないで」
「地元の仲いい友達はね、私が不倫してる事打ち明けたら皆ドン引きでさ…最近は遊びにも誘われなくなっちゃった…仲間だと思ってたのにな…」
「歩未ちゃん…」
悲しそうな顔をする歩未ちゃん。私は少し迷ったが勇気を出して言った。
「あの、さ…私で良かったら話聞くよ。もし話せるなら…話して?そしたらほんのちょっとは楽になるかもしれないし…」
「…」
歩未ちゃんは黙り込み私から目をそらした。
「ご、ごめんね!話したくないよね…やっぱりそういうのは…」
「部長ね…奥さんの所戻るって」
「え…」