幼馴染みはイジワル課長
「それになんだよ話って…今じゃダメなのか?」

「…」


碧にそう言われてカチカチというキーボードの音を聞きながら、私はとっさに考えた。



どんなに深く考えて見ても今以外じゃなきゃダメと理由はない…

今でもいいし…

後でも今も変わらなんだ…




「えっとね…話っていうのは…」

「うん」


デスクの机に肘をつく碧は、軽い感じで返事をしながら片手でキーボードを打つ。




いざ告白するっていっても…何を言えばいいんだろう…

何から話せばいい?


私にとって碧は大き過ぎる存在だから、どこから話したらいいかわかんない…


物心ついた頃からずっと碧が好きだった…

碧が眩しかった…

世界で一番かっこいいって思った…


碧と梨絵と3人で遊ぶのも好きだった…

梨絵も私にとっては大き過ぎる存在だったから、碧が好きだと知った後でも梨絵のこともやっぱり嫌いにはなれなかった。

梨絵のことも言った方がいいかな…梨絵が碧のことを好きだった事を打ち明けるべきなのかな…


いや…それよりも今は私が碧に気持ちを伝える方が先だよね…





もう好きって言えるよね…


大好きって言いたい…




梨絵…

言ってもいいよね…?





言うだけならいいよね…?












「………ぅ、…っ」




今まで抱えていたたくさんの想いが頭を駆け巡り、胸がいっぱいになり涙が溢れ出す…






「…桜花?なに泣いてんだ…?」

「好き…」

「え…」


泣いている私に気づいた碧はとっさに立ち上がり席を離れ私に近寄った。しかし私の一言を聞き碧は私の前でピタリと立ち止まった。

私は椅子に座りながら碧の方を向いて俯き、肩を震わせて泣きながら口を開く。







「…好き…碧……好きなの…」


碧を好きだと言う程気持ちが軽くなっていく。今まで心に積み重なってきたものが、どんどん崩れ落ちていくようだ…






「大好き…碧…」

「…」


うつむいているから碧の表情を確認できないが、今は見るのが怖い…

このまま一方的に気持ちを伝えてきれいに終わりたい。







「ごめんね…こんな事言って…それだけだから…別に深い意味はなくて…私は…」





グイッ












え…











ガタンッ



突然碧に腕を掴まれ椅子に座っている体を起こすように引っ張られた。そして強く力いっぱい抱きしめられる…

椅子がデスクに当たり、机の上に置いてあった資料の紙がばさっと床に落ちる音がする。







碧…?
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