幼馴染みはイジワル課長
「……ここが碧のうち?」


あれからコンビニに寄って買い物をした後、最寄りの駅から数分歩いた所にマンションが見えてきて碧は迷うことなくそのエントランスに入っていく。そこは打ちっぱなしの外壁ですごくおしゃれなマンション。

手馴れた手付きでエントランスの鍵を開ける碧。私はキョロキョロと辺りを見渡していた。







「入って」

「あ、うん」


ロックが解除されて入り口のドアが開くと私達は中へ入る。

もちろん廊下も打ちっぱなしの壁で出来ていて、とても静かでどちらかというとミステリアスな雰囲気がした。同時にこんなところに住んでいる碧は更にかっこいいと思った。







ガチャ…


最上階の一番奥が碧の部屋。碧がその部屋の鍵とドアを開けた。







「お邪魔します…」


碧に続いて私も中に入り玄関でヒールを脱ぐと、先に中に入っていた碧が電気をつけて薄暗かった部屋がパッと明るくなる。私はやや控えめに部屋の中に入った。






「すごーい!」


部屋の中に入ってみてびっくり。奥行のあるその部屋はとても広くて一人暮らしには余る程。

広々としたリビングにはテレビやシックなソファー、キッチンは新品みたいに綺麗で碧らしい部屋だった。どちらかというと家具は少なめでスッキリし過ぎているという感じもするが、それがまた碧っぽくてかっこいい。





「珍しい物は一切この家にはないぞ。30歳のただのおじさんの部屋だ」

「おじさんじゃないよ。まだお兄さんだよ」


ネクタイを緩める碧はリビングの奥にある部屋に入っていく。私は後についていきその部屋を覗き込んだ。

その部屋は寝室でベットとクローゼットだけで、とてもシンプル。碧はネクタイを取りスーツの上着を脱ぐとベットの上にポンと置いてクローゼットを開けた。

クローゼットの中はワイシャツ数枚と何着かのスーツがきちんとハンガーにかけられていた。その下に衣類の入ったボックスを開けると碧はその中から部屋着のようなものを出す。






「碧かっこいぃー」

「…は?」


碧に近づいてそう叫ぶと碧はキョトンとした顔をする。


当たり前だけれどこの部屋はどこを見ても碧らしいところが見れてすごく嬉しくなる。







「ううん、なんでもない」

「…なんだそれ。これ俺のだけど良かったら着れば?スーツのままじゃ堅苦しいだろ」


碧は私に白のTシャツとグレーの短パンを差し出した。それを手にとった私は胸が思いっきりキュンと鳴る…
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