幼馴染みはイジワル課長
「あ、待ってよー」




スタスタと先を歩く碧を追いかけた私は、少し大胆にごく自然に碧の手を握ってみた。

碧はすぐに手を握り返してくれて、私は積極的に指を絡ませた。




ドキドキした。








しばらく歩くと住宅街に入り、私の家が数メートル先に見えてきた。




もう着いちゃうのか…

碧と家が近所なのは嬉しいけど、送ってもらう時はなんか寂しい…








「桜花…」

「え?…あ…」


突然碧が私の手を引き、私を自分の胸に引き寄せると私をそっと抱きしめた。


もしかして…もうすぐ家に着いちゃうから、こうして抱きしめてくれたのかな…



私は碧の胸にピタリとくっついて、別れを惜しんだ。




碧はいつもいい香りがする…香水をつけてるのかな?

爽やかでちょっと甘い…

そんな碧みたいな香り…





外は少し蒸し暑いくらいなのに、こうやって碧と抱き合っていても全然嫌じゃないよ。


時間が止まって欲しいと本気で思った…

このまま碧とどこか遠くの国に行っても、私は構わないよ…










「…あれ?キスは?」


抱きしめてくれた後は当然キスが待っていると思ったのに、碧は私を離すと先に進もうとする。

私は口をタコのようにつぼめて、碧に向って自分の唇に指をさした。







「…お前の家の近所でそんなことできっか。ここは俺も昔住んでて知り合いが多いんだ…誰に見られてるかわかんねえだろ」

「誰も見てないよ!」
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