幼馴染みはイジワル課長
「ちょっとトイレ行かない?」

「そうだね」


冷や汗をかいた私と歩未ちゃんは、一先ずトイレに駆け込むとメイク道具を出して崩れた化粧を直す。




「あー緊張したなぁ」

「まさか同じエレベーターに乗るとは思わなかったしね」


会いたくない人と会っちゃうことってよくあるもんな。

会いたい時は会えないのにね…






「やば!もうすぐで朝礼だよっ」

「そうだね!急ごう!!」


私と歩未ちゃんは慌ててトイレから出てオフィスに走って戻ると、朝礼が始まる直前でギリギリセーフというところだった。

デスクに座る碧にちらっと見ると、一瞬目が合ったような気がした。



ひとり戸惑っていると、碧は私から目をそらしてパソコンに目を向けて仕事に戻っているようだった。



今日の碧を社員達が見てもいつもと変わりなく、特に変化もない。いつも通りの真田課長だ。


それに比べれば今日の私はとても違和感があり、自分でもいつもとはかなり違っているというのが手に取るようにわかった。

碧と付き合えたから、まだどこか浮かれてるんだろうな…





気を引き締めなくちゃ…

恋も大切だけどここではちゃんと仕事をしないとね…仕事を疎かにしたら、それこそ碧に嫌われちゃうよ…


私は「ふぅ」と息吐き落ち着きを取り戻し、そっと自分のデスクに腰掛けた。

そしていつも通り朝礼が終わると、私は日課のように碧のデスクに近づく。落ち着いたつもりだったけど、こうやって碧に近づくとやっぱりドキドキするなぁ。



ニヤニヤなんかしてたら碧に怒られるから、絶対に笑っちゃダメ!


私は口元にぐっと力を入れて眉間にしわを寄せ、碧に近づき声をかけた。









「課長。何かお手伝いする事はありますか…?」


パソコンに目を向けて書類を持つ碧は、私にゆっくりと顔を向ける。

その顔は無表情で少し怒っているようにも見える。








「……」


課長は何も言わずに私を無表情のまま見ている…


なんだか怖いような…

だけどちょっと嬉しい気もする…






「あの…課長…?」

「随分不機嫌な顔をしているな。なにか嫌なことでもあったのか?」

「えっ…」


まずい!

ニヤけそうになる顔を堪えて顔に力が入ってたせいか、もしかして怒ってるのかと思われてる!?
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