幼馴染みはイジワル課長
「やめとけって。今更一人暮らしなんてしたって時間も金も無駄だよ」

「どうして?」

「お前の歳でまだ実家にいるならもったいないってこと」


呆れたようにそう言って、碧は「バカだな
」と言ってビールをグビグビと飲んだ。




思ってた反応と違うなぁ…

「お前は早く自立しろ」とか言われるかと思ってたのに…






「最近は物騒な事件とかも多いし…無理に一人暮らしなんてしない方がいいと思うよ」

「そうだけどさ…」


歩未ちゃんがするって言われるとどうしてもねぇ…

身近な存在の人の影響って強いし、それに置いてかれてる感がすごいんだよな。






「他人と自分を比べなくてもいいだろ。本当に単純だな」

「う、うるさいな!ちょっと軽いノリで言っただけでしょっ」


私はキーっと怒り、まるで子犬のように碧にキャンキャン吠えまくった。





他人と比べなくても…か。

まあ、その通りかな。









2週間後


「今日は休みなのに来てくれてありがとう!本当に助かるよ!」


約束通り歩未ちゃんの引越しを手伝いに来た私は、午前中に引越し先のマンションへ顔を出した。






「ううん!気にしないで!ってゆうか、すごいいい部屋だね~きれいだしおしゃれ♪」


その部屋は思っていたよりも何倍もきれいで部屋数も多く、一人暮らしにしては少し広過ぎるくらいだ。

聞いていた通り駅からは離れているが、それを除けばすごくいい条件が揃っていると思う…






「すまないな澤村。後で飯でもおごるから今日はよろしく頼むよ」


買ったばかりの食器棚を組み立てながら、部長が私に話しかけて来た。

部長は早朝から歩未ちゃんの引越しを手伝っているらしく、ラフな服装でタオルを頭に巻いている。


いつものスーツ姿の部長とは全然違う雰囲気だな…







「真田は今日は何してるんだ?引越しを手伝いに来てくれるって言われたんだが、そんなにやること無いだろうから断ったんだけど」

「碧は今日は友人とフットサルに行ってます」


貴文さんや他の仲間達と久しぶりにフットサルに行った碧と、土曜日に会わないのは付き合ってから初めて。






「ぶーちょももう帰っていいよ」


ダンボールから衣類を出して整理している歩未ちゃんが部長に言う。






「なんでだよ?女の子2人だけじゃ大変だろ」

「家具や電化製品は引越し屋さんが運んでくれたんだから、あとは荷物を片付けるだけだもん」

「でもなぁ…」

「女子は見られたくない物とか色々あるんだから!早く帰ってよ」


歩未ちゃん…

そんな言い方しなくても…






「ひどいな~……わかったよ。何かあったらすぐ連絡してくれよ。明日また来るから」

「うん、ありがと」


部長は私に挨拶した後、とぼとぼと部屋から出て行った…







「いいの?部長と喧嘩でもしたの?」


部長が部屋から出て行った瞬間、私は歩未ちゃんにヒソヒソと聞いた。

まだ外に部長がいるかもしれないし、大声では言えない…





「いいのいいの。朝からずっと口出してきてうるさいんだもん…ここは私が住むのに」


なるほど…

その光景が目に浮かぶなぁ。






「本当はね、彼氏ばっかりに頼りたくないだけなの…結婚を考えてるなら早く私も大人にならなくちゃ」

「歩未ちゃん…」
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