幼馴染みはイジワル課長
私なんて碧に甘えてばかりなのになぁ…なんかまた置いてかれてる感が……





「それに桜花ちゃんと2人になりたかったしね!ちょっと話したいことがあって」

「話…?」


わざわざ部長を帰してまでする話ってことは、部長には言えない話ってこと?






「いやぁ…そんな深い話ではないんだけどね」

「うん…」


深い話ではないけど部長に言えない話…?


私は歩未ちゃんの様子を伺いつつも、何を打ち明けられるんだろうと内心ドキドキしていた。






「良かったら私とルームシェアしない?」

「へ…?」


すごくシークレットな事を聞かされると思ったのに、思っていた事とあまりにも異なる言葉を聞き、思わず私は目を点にしてしまった…






「ルームシェア?」

「そう!ここ一人暮らしにしては広いし、部屋一個余りそうだしさ」

「ちょっと待って…どうして急に?」


引越しが決まってから2週間くらい経つけど、そんな事一言も言ってなかったよね。






「うーん…実はやっぱり一人で家にいるの寂しいんだよね。部長に同棲誘われたから勢いで決めちゃっただけで、本当は一人暮らしが不安でたまらないの」

「まあ、その気持ちはわからなくはないけど…」


碧の言う通り。最近物騒だから、女の人の一人暮らしは色んな意味で怖いよね…





「こんな事ぶーちょの前じゃ言えないじゃん?同棲断って一人暮らししたけど、本当は寂しくて仕方ないなんて…それこそぶーちょがここに転がり込んで来て、半同棲状態になりかねないよ」


結婚する前に同棲することは、歩未ちゃんとしてはどうしても避けたいところなんだね。





「もちろん強制ではないよ?無理なら無理でいいんだけど…ちょっと考えてみてよ」


歩未ちゃんに「うん…」と返すと、私達はおしゃべりしながら片付け作業をした。

ガールズトークをしながら、私は頭の中で実家を出ることを現実的に想像していた…




ルームシェアという形なら両親も碧も納得してくれるかな?

元々両親は一人暮らしに反対しているわけではないけど、「この歳で今更なんで?」なんて言われることは目に見えている。

碧にはこの前呆れられながら反対されたけど…ルームシェアなら大丈夫かも。



私もやっぱり早く自立しなきゃ。

子供のままじゃダメだよね。














「…………どうでしょう?歩未ちゃんとルームシェアということならいいかな??


「…」


数日後

仕事帰りに碧と立ち寄った居酒屋で、私は歩未ちゃんとルームシェアをしようと思っていることを早速碧に話してみた。

ジョッキのビールを飲みながら、碧は私の話をしばらく無言で聞いている。

碧の顔色を伺う私だが、表情から碧の答えが全く読み取れずただ緊張だけが高まる。







「いいんじゃない?」


軽い口調でそう言うと、碧はタバコを出してライターで火をつけた。




「おお!」

「…なんだよ?」


私のリアクションを見た碧は、口から白い煙を出して眉をしかめた。





「いや…あっさり賛成してくれたから、ちょっとびっくりしただけ。また「バカ」とか言って怒られると思ったのに」


まさか賛成してくれるとは思ってなかったな…







「2回も俺にその話を持ちかけるなんて…よっぽど家を出たいのか?」

「そ、そういうわけじゃ…」


実家暮らしにうんざりしているわけじゃないです!

むしろ感謝してるし、本当はまだまだ甘えていたいところなんですが…






「ま、山城はしっかりしてるし…あいつとなら一緒に住んでもいいと思うけど」

「なるほど」


歩未ちゃんとならいいと…





「おじさんとおばさんにもちゃんと話せよ。お前もいい歳なんだから、親に心配かけるような事はするな」

「はい…」


兄と妹みたいな関係を越えて、父と娘みたいな感じになったよ。

私と碧はそのどちらでもの関係でもなく、ごく普通のお付き合いしているだけです…
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