【短編】英国紳士は甘い賭け事がお好き!
今まで、逆らった事も無い、思春期の反抗期もない、けれど、自分自身のやりたいこと、目標も見出せず、此処まで来た。
「それで、全部放りだして、貴方、何をするつもり?」
「OLとか……?」
疑問形なのは、したいことは特にないが、普通の女性みたいな事をしてみたい。
だが母も顔はみるみる赤く、ヤカンのように沸騰すると、縁側の襖を閉めた。
「大馬鹿者! 380年続く名家の鹿取に泥を塗るつもりか!」
「お母さ……師匠!」
「貴方は、鹿取の跡取りとしての自覚が足りません! 何も意志が無いのなら、じっとしとりなさい!」
「え?」
「せめてどこかの次男と結婚して体裁だけでも取り繕って頂きます!」
沸騰したヤカンは、そう言うと立ち上がり、私室へと帰って行く。美麗はそこに入るのをまだ許されておらず、ただただ、ぼーっと畳の上に力なく座っているのみだった。