【短編】英国紳士は甘い賭け事がお好き!
この家に生まれた以上、逃げれない。自分の意志は要らず、家の名を残す事が使命。


『何も意志が無いのなら、じっとしとりなさい!』


「だって、私の意志なんて要らなかったじゃない。行きたい大学も短大さえも決められて、私に聞いてくれたこと、なかったじゃない」

 空っぽな自分を惨めったらしく母親のせいにしても、本当に自分には何もないのだから仕方ない。この引っ込み思案でおっとり汾若したのは、亡き父親似のせいだ。

「また、誰かのせいにしてしまう」

 こんな弱い自分が嫌いだと、しくしく泣いていたが、午後からは母の御客にお茶を出さねばならず、涙を乾かそうと縁側に降り立った。

 いくらかも分からない、身分不相応な藍染めの着物に、ひらひらと桜が触れては落ちていく。懐から扇を取り出し縁側に投げ捨てると、着物の裾を掴んで泣いた。
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