【短編】英国紳士は甘い賭け事がお好き!
 応接間のすぐ脇にある桜の木の前で声を殺して泣く自分はなんとみじめな事だろうか。耳を通り抜けるのは、舞踊の琴や三味線、絹擦れの音。

 此処に生まれてきたかったわけじゃない。ただ、自分の事は自分で決めて、自分で失敗して、自分で歩いてみたかった。
 結婚すれば、三歩後ろを歩く良妻賢母を求められ、嫡男を産まなければ石女と馬鹿される。


 この古臭い、小さな籠の中で生きるのは、美麗には退屈で怖かった。
 

もう飼い慣らされている今、飛び出したとしても一人では生きられない。籠の中、美しく成長した羽は飛ぶことも知らない。

「ヤマトナデシコ」

 不意に、舌足らずな日本語が聞こえてきた。その声は、美麗を優しく包み込んでいく。
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