危険なお見合い
ライドが優理香を捕まえようとすると、優理香は半狂乱状態で叫んでいた。


「いやぁ!!!さわるな!私にさわらないで。
ここで死ぬわ。
あんたなんかに連れていかれるくらいなら、ここで!」


そう叫んだ優理香は右手近くにおちていたグラスの破片で左手首を切った。
血がざざーっと床に流れおちる。


「ゆ、優理香さん!なんてこと・・・ううっ・・・。」



「ナギコママ!くそっ、仕方がない。ママだけでも連れて出るか。」


ライドは松田凪子を抱えて出て行った。

そして、床に血が広がろうとしていた優理香の手首を凌太が布巾でまいて応急手当を始めた。


「彼女も救急車に!」




優理香が目を覚ますと、凌太が心配そうにのぞきこんでいた。


「凌路さ・・・あっ・・・凌太さんなのね。
あの・・・凌路さんは?」


「うん、命には別条ないよ。
ちょっと見た目ボロボロでね、骨折もしてるからここには来れないんだ。
優理香ちゃんが歩いて見にいってやってくれないかな?」


「もちろん!でも・・・凌路さんの容体は?」


「ライドの部下に囲まれてしまってね。
殴られて肘の下1か所と、肋骨を2本、それから足を1か所折れている。
でも内臓は損傷がないからね、後遺症で悩むことはないらしいよ。」


「私のために・・・そんな・・・。」


「兄さんも不本意な結果で悔しがってたよ。
兄さんのたてたシナリオでは、君の前で颯爽と君を助ける王子様をしたかったみたいだからね。

まさか、部下に囲まれて君より先に病院行きにされるとは思ってなかったらしい。
それよりも君がライドに連れていかれなかっただけでもよかったよ。
それにしても君も思い切ったことをやってしまったんだね。」


「もう、夢中で・・・っていうか連れていかれたらもう死んだも同然だと思ってたから。」


「ライドのやつ、案外遊びだけってわけでもなかったのかもしれないな。」


「えっ、どういうこと?」


「兄さんに暴力をふるったやつからとった証言なんだけどね・・・驚かずにきいてほしいんだけど・・・」


「何なの?」


「あいつが昔、君を裸にしたのは仕事で使っていたメモリーカードを探していたからだったんだ。
でも、涙を流す君を見ていて彼は君のかわいさに引き込まれてしまったらしい。
誰かさんと似たような感覚だよな。」


「う・・・ん。
でもそれなら、そうだったっていえばいいのに。」


「ライドは言えなかったんだ。
金髪で碧眼の貴公子だろ。小さい頃から女には不自由しないやつだ。
抱いてしまえば、大抵の女はそばにいたがるからね。」


「そ、そんなぁ!」


「でもゴミより汚いもの扱いされて拒絶されたうえ、手首まで切られてはあいつだってこたえただろうな。
自業自得なんだろうけどね。」


「その話、どのくらい信じられるの?」


「わからない・・・だけど、ライドは凪子さんを連れて帰ったよ。
ナギコママに苦労はかけられないってね。

きっと小さい頃から苦労ばかりかけたんだろうね。
それはご主人にも同じことがいえて・・・若い女ができた夫に愛想をつかした。」


「それで、ここにきたのね。」
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