危険なお見合い
2人ともリハビリをしながら、事務仕事をこなしていく。
そんな日々がしばらく続いた。


「こんな地味な仕事をさせて面白くないかな。」


「そんなことないわ。
逆に、凌路さんがこんな地味な仕事までやっていた方が不思議なくらい。」


「地味な仕事の積み重ねしかしてないよ。」


「まったまたぁ~~~!きゃっ!」


凌路の突然のキスに優理香はびっくりしたが、抗う理由は何もなかった。


「うっ・・・神様はこの先をじゃまするらしい。
リハビリを先にしろだってさ。」


「うふふ、そうみたいね。
体を先に治しましょう。」




優理香は中庭に出て、掃除を始めた。
けっこう枯葉とゴミが落ちていて、1度の掃除では片付かない。


「優理香さん・・・。」


「えっ・・・あっ、凪子さん・・・。
どうなさったんですか?

息子さんに何かされたんですか?」


「違うの。
ライドは・・・ライドのことは許してやってほしいの。
私なんかが謝っても、あなたの気持ちがおさまるわけないのはもっともだと思うわ。
でも、でもそこを・・・お願い、ライドを許してあげて。」


「どういうことなんですか?
私も凌太さんから噂でですが、ライドさんにも事情があったらしいとききました。
でも、あの頃の私は・・・男の人のこと何も知らなくて。
いきなり、服を脱がされて・・・怖くて怖くて。」



「私も詳しい事情をライドを問い詰めてきいてみました。
あのときは、ライドが初めて会社のトップとして会社のさい配を振るった日だったの。
それまでは、弟の那月といっしょに父親の仕事を手伝っていたけれど、父親は那月よりもライドを後継者にと考えていたの。
あたりまえといえばあたりまえのことなんだけど、そのライドも決して長男として甘やかされたり、鍛えられたわけじゃなかったの。

だから仕事のプレゼン用のメモリースティックをなくしたときに、平常心ではいられなかった。
弟と立場が変わってしまうかもしれない。
みんなの前で恥をかいてからやめさせられるかもしれない・・・っていろいろ考えてしまったの。」


「それで、そのメモリースティックはあったんですか?」


「ええ。ライドと仲良くなりたかった別のメイドが持っていたんです。」



「ええーーーーっ!」


「ライドは大切なプレゼンを終えて、冷静になったときにあなたに対してしてしまったことを悔いていたわ。
よりにもよって自分のミスをあなたのせいにしてレイプしようとしたって・・・。

ほんとはレイプなんて考えてもいなかったことなのに、思い返せば何の罪もないあなたを襲ってショックを与えてしまったって・・・。

それからあなたの活躍した雑誌の写真をながめて、だんだん好きになってしまったらしいの。
もちろん服を脱がせたときのあなたをみたときも、かわいいお嬢さんだって思ったらしいんだけどね。」


「そんなこと言われても。」


「そうね、あなたの大切な時間をひどいものにしてしまったのは事実だし、今さらよね。
でも親バカかもしれないけれど、せめて許してあげてほしいの。

そして早く忘れて・・・幸せになって。」
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