危険なお見合い
優理香はしばらく黙っていた。
簡単に忘れて幸せになれるものなら早くなりたいのに・・・と心の中でつぶやいた。


すると、凪子の後ろから金髪の男があらわれた。


「きゃっ!・・・」


「待ってくれ、すまない。本当に申し訳なかった。
あのメモリースティックが出て来なければ俺のスタートはもうない・・・って思ってしまって必死だったんだ!
プレゼンが終わったあとで、きちんと説明しようと思ってホテルの人事に問い合わせたら、君はもうホテルをやめていた。

とてもショックだった。
自分の仕事はうまくいったのに、君から職をとりあげてしまった上に、ずっと俺は君の恐怖対象になってしまって・・・人生まで狂わせてしまったなんて・・・どう償ったらいいのか。
申し訳ありませんでした!」



「ライド・・・さん。
本当にその言葉は信じていいんでしょうか。」



「もちろんだ。母親に口をきいてもらうなんてみっともないと思ったけれど、こうするしか君と会う機会はもうないと思って。
とにかくきちんと謝罪しなければ、俺は君の文章の応援もできないんだからね。
ストーカー扱いではなくて、普通のファンとして応援したい・・・。」



「それじゃ・・・。」



「だめだ!そいつは嘘を言っている。」


「凌路さん!?」


「そいつは君を裸にする前に、俺たちの両親を地獄へ追いやったやつだ!
おかげで父は死んで、母は後を追うように病んでしまった。

それにそいつは、部下を使って今度は俺を殺そうとした。」


「なっ、何を証拠にそんなこと!」


「まだしらばっくれるのか?
凪子さんには嫌なことを言ってしまうけど、ライド、おまえは俺を殺して優理香を宣伝用に連れて行こうとしていたらしいじゃないか。

俺の弟と部下がおまえの電話をきいていたんだ。
打ち所が悪くて死んでくれればいいんだが・・・って話していたらしいな。」



「ほ、ほんとなの・・・ライド!
凌路さんを殺そうとしていたの?
そんな・・・ママは信じられないわ。」


「ちっ!ああ、そうさ。
こいつさえ、優理香とベタベタしていなければ、俺は罪を償い優理香と親しくなれたのに。
おまえの父親は俺の父に事業で負けた。
俺の父は負けたものからは容赦なく、勝った報酬をいただいていくだけの男だっただけだ。

そんなことはビジネスの上ではあたりまえに起こることだ。
それを逆恨みして大人げないな。」


「勝った報酬だと?
それは一般的な競争で起こりうることだろ。

おまえの父親はな、俺の両親をだまして盗んだんだよ。
父を負かしたように見せかけ、母を呼びつけてあることないこと事業ではありえない犯罪を夫がやっていると吹き込んで夫婦間の愛情までおかしくしてくれた。」


「ははは、愛情だと?
お互いを信じられない夫婦に愛情なんてあるのか?

その点、うちの凪子ママは愛情がなくなったとわかればさっさと日本へ帰ってきた。
そして自分らしく生きてる。
どんなときも生きてなきゃ、負けなんだよ。」
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