危険なお見合い
翌朝、凌路は優理香の所属しているライター事務所に出かけた。

「おはようございます。
持ち物の点検をしたら出かけようと思います。
チェックリストはここにあるとおりだから、ざっと見ていただいて必要なものは事務所から持っていってください。」


「わかった。こういう取材は初めてだから持ち物は気になってたんだ。
マニュアルは徹底してるんだな。」


小さな空港まで出て、セスナ機でとある島へとたどりついた。

「ここへ来るお客はほとんどが船なの。
それでビジターとか家族連れは島を代表するホテルの方へと向かうのよ。

でも、芸術家や旅慣れた人は、ちょっとした癒しを求めてカナリヤハウスに行くの。」


「へぇ、最近できたのかな?」


「そうね、今年で3年目だと思うわ。
ここは朝と昼は各部屋でただのコンドミニアムして暮らすことも可能なの。

でも夜はみんなで・・・っていう方針なのよ。
だから夜に2人きりになりたいカップルとか、夜遊びたい人には向いてないかもしれない。
ここでの仲間で夜を楽しむのよ。」


「いらっしゃい!名郷さん。
2日間よろしくお願いしますね。」


「いえ、こちらこそ、取材を許可していただいてうれしいです。
売りでもある、仲間の夜を楽しませていただきますね。
こちらはカメラマンの棚崎です。」


「棚崎です。よろしくお願いします。」


「はい、よろしくお願いします・・・って・・・あなたはホテルタナサキの・・・」


「あ、親戚なんです。よく似てるっていわれます。」


「そうだったんですか、親戚なら似てるのも無理はないですね。
やっぱり同じ業界に興味があるんですね。」


「そうですね・・・あはは。」


凌路と優理香は玄関や部屋など、紹介のページになる写真をとって、説明文をいれた。


「すごいわね、写真の腕・・・アマチュアですって放っておくのがもったいないわ。」


「ほめてもらえて光栄だね。
ご主人に最初は偽名使おうかと思ったけれど、いずれわかってしまうだろうから名前は隠さなかったよ。」


「いい判断だと思うわ。
同じ業界だし、バレるのも時間の問題だもの。

夜までもう少し時間があるから、先にお風呂すませて来るわね。
凌路さんも夜までお風呂利用したりお部屋でのんびりしていていいわよ。」


「なぁ、夜に何があるんだい?」


「見てのお楽しみよ。
ヒントはね、老夫婦2組を祝うよ。」


「金婚式とかかなぁ・・・。それにしては家族連れは少ないみたいだけど。」
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