run and hide


 ・・・・・嫌だ、と言われましても。

 ってか、気付けよ。そして空気をよんでくれ。

 私は携帯を閉じる気にもならず、ため息をついて壁にもたれかかる。

「鈍いのか、バカなのか、判っててやってるのか、一体どれ・・・・」

 もう~・・・何なのよ~・・・もうすぐ30の男が女々しいこと言ってんじゃねーよ、他の女友達つくれよ!

 朝っぱらからまたムカついて、その勢いに任せて返信を打つ。

『おはよう。ちゃんと帰った、大丈夫。悪いけど、もう会いたくないの。他に女友達作って愚痴ってちょうだい。じゃあね』

 カジュアルな感じを出すために、最後には手を振る絵文字とニコニコマークまでいれてやった。

 怒ってても、私ったら優しい。

 そしてやっと出勤準備を始める。

 バタバタとシャワーを浴びて身支度を整え、コーヒー片手に新聞を開いていると、また携帯が振動していた。

 開ける、メール、また正輝。

『愚痴るための女友達なんかじゃない。翔子にずっとそんな役目させてたの悪いと思ってる。友達をやめるなんて、そんなこと言うな』

「―――――――」

 ゴン。思わず壁に額をぶつけてしまった。

 ・・・・いや、だからね。私は友達でなく、恋人になりたかったのよ、あなたの。

 判ってないんだろうなあ~・・・情けなくなって、私はまた盛大なため息。

 ここであんたが好きなのよ!!って言ったら、どうするかな。・・・・・困るんだろうなあ~・・・そして私を傷つけないように、一生懸命対応しようとするんだろうなあ~・・・。


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