run and hide


「いいえ、別に言ってない。多少情けなかったけど、いつもの正輝だった」

 情けないってところで頬を指でかいていたけど、めげずに彼はまた聞いた。

「・・・じゃあ、どうしていきなり友達をやめるなんて言うんだ」

「言ってないわよ。正しくは、もう会わないって言ったの」

「だから、何で」

「ちゃんと説明したでしょうが!!」

 我慢ならず、私は立ち上がって罵声を浴びせる。もう、何なんだー!こいつは!!

「仕事にかまけて長いこと彼氏もいないのよ!でももう29歳なのよ!周りもうるさいのよ!結婚する相手を探す必要があるのよ!!」

 本当はあんたが好きだったから、声をかけてくれた他の男は断ってきたのだ、とは口が裂けても言えない。今ではここの会社の自分が所属する事務所でも、歳が上の女子社員の立場になっている。

 そう簡単にお誘いの声もかからない立場と歳に。

 正輝は息も荒く立ち上がった私を静かにじっと見ていた。

「・・・まだ彼氏はいないんだろ?」

「うるさいわね!だったら何よ!?」

 まったくカンに触る野郎だ!私は腕を組んで睨みつけた。

「だったら、俺との付き合いを変える必要はないだろう。長く、安心して一緒に居られたのに。新しく男が出来るからって失くす必要はあるのか?俺に新しい彼女が出来たって、翔子はそんなこと言わなかったじゃないか」

 今回もダメだったかってショックで、言えなかったんだー!!!

 ムカつきすぎて眩暈がしてきた。

 ああ・・・この男を殴りたい。もう、早く目の前から消えてくれないかしら。

「――――――とにかく!」

 私は手の平をみせて、キッパリと言った。

< 14 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop