run and hide
「いいえ、別に言ってない。多少情けなかったけど、いつもの正輝だった」
情けないってところで頬を指でかいていたけど、めげずに彼はまた聞いた。
「・・・じゃあ、どうしていきなり友達をやめるなんて言うんだ」
「言ってないわよ。正しくは、もう会わないって言ったの」
「だから、何で」
「ちゃんと説明したでしょうが!!」
我慢ならず、私は立ち上がって罵声を浴びせる。もう、何なんだー!こいつは!!
「仕事にかまけて長いこと彼氏もいないのよ!でももう29歳なのよ!周りもうるさいのよ!結婚する相手を探す必要があるのよ!!」
本当はあんたが好きだったから、声をかけてくれた他の男は断ってきたのだ、とは口が裂けても言えない。今ではここの会社の自分が所属する事務所でも、歳が上の女子社員の立場になっている。
そう簡単にお誘いの声もかからない立場と歳に。
正輝は息も荒く立ち上がった私を静かにじっと見ていた。
「・・・まだ彼氏はいないんだろ?」
「うるさいわね!だったら何よ!?」
まったくカンに触る野郎だ!私は腕を組んで睨みつけた。
「だったら、俺との付き合いを変える必要はないだろう。長く、安心して一緒に居られたのに。新しく男が出来るからって失くす必要はあるのか?俺に新しい彼女が出来たって、翔子はそんなこと言わなかったじゃないか」
今回もダメだったかってショックで、言えなかったんだー!!!
ムカつきすぎて眩暈がしてきた。
ああ・・・この男を殴りたい。もう、早く目の前から消えてくれないかしら。
「――――――とにかく!」
私は手の平をみせて、キッパリと言った。