run and hide
「仕事も忙しいし、お見合いを本当にしようと思ってるの。だから、もう正輝と飲みに行く機会もなくなるわ」
「・・・友達って、そんなもんなのか」
その静かで低い声にドキっとする。
傷つけてしまった・・・。正輝は私から目を外して、少し唇を噛んでいた。
私は一気に怒りが冷めて、途方にくれて立ち尽くす。
それでも・・・。
でも、頑張らなきゃ。
体の横で拳を握り締めて、何とか立っていた。フラフラで、すぐにでもやっぱり今のは忘れてって叫びそうだった。叫びたかった。そして、新しい約束を取り付けたかった。
だけど、ぐっと耐えたのだ。
「私・・・行くね。今までありがとう。正輝も、幸せになって――――――」
私が多少感傷気味になって優しくした声で言うと、それに被せて正輝のキッパリとした声が聞こえた。
「納得出来ない」
「・・・・はい?」
正輝はきっと顔を上げると、私を正面から見詰めた。強い視線に思わず息をのむ。
「俺、そんな理由納得出来ない。このまま終わったりしねーぞ」
「は?」
・・・・いやいやいや。そんな強い台詞、言えるんだったら元カノに言えよ。そしたら別れなくて済んだのでは?
と頭の中で思ったけど、脱力しただけで言えなかった。
「翔子は大事な友達だ。お前の幸せを願ってる。だから、相談なんかにも乗りたい。俺、役に立たないかもしれないけど―――――――」
「立たない。諦めて。私はもう正輝の相談には乗らない」