run and hide
私は男友達なんていらないのよ。どうして判らないのよ、この頑固者。
私の断言に彼は一瞬ぐっと詰まった。だけれども営業で鍛えられた対応能力で更に言い募ろうと身を乗り出す正輝の横を、私はパッとすり抜ける。
「俺は――――」
「やかましい!」
ドアのぶを手にし、私は振り返った。
「私にちゃんと彼氏が出来て、正輝にもちゃんと彼女が出来たら、また会いましょう」
それだけを言って、目の前でドアを閉めてやった。
そしてヒールで可能な限り早く走った。ダッシュダッシュ!さっさと消えなきゃまたあの頑固者が追いかけてくる。
まだあと10分昼休みが残っているのを確認して、ビルの屋上に上る。
そして携帯を取り出して、正輝の電話を拒否する設定に変える。メールアドレスを変えるのは面倒臭いけど、仕方ない。
私はあいつから逃げると決めたのだ。全力で逃げるって、決めたのだ。
設定し終わってから、力が抜けてずるずると座り込む。
ああ・・・タバコ、持ってくればよかった。
まさか、会社に来るとは思わなかった。甘くみていた。たかが元同期だと思って、すぐ離れてくれると思っていたのに・・・。
まだ、友達だって強調していたし・・・。お前に幸せになって欲しいんだ、だって。
バカヤロー。あんたにそう言われるのが辛いから、離れるんだよ・・・・。
昼休みの終わりのチャイムがなる。
私も重たい体を起こして、事務所に戻っていった。