run and hide
3、追いかけっこ
夜。
テレビを見ながら、交友関係を保ちたい人たちに新メルアドを送信した。
部屋の中ではカクテルは作らないから、専らビールだ。一人で3本目の缶ビールを開けて、窓も開け放して風を入れた状態で、ぼんやりと酔っ払っていた。
テレビの中ではこの春に始まったドラマが進行中だ。
・・・・こんなにうまくいくわけないじゃん、恋愛が。
突っ込みが止まらない。
お綺麗なヒロインが、格好いいヒーローに愛されている。
見て判るだろうが。その男はあんたが好きなんだよ。早くラブホでもどこでもいいから行ってやっちまえ。と、これまたつい暴言を吐く。
・・・実際の恋愛は、そんなにうまくいかねーよ。
酔っ払ってソファーに寄りかかり、ため息をついた。
私は、もう4年も正輝に片思いだったんだ・・・。
瞼を閉じると自分が諦めた男。
一緒の会社で同期として働いていた時の正輝。よく一緒にランチに社員食堂に行って、AランチにするかBランチにするかで悩んだ。
失敗に二人して気付かなくて、クライアントに頭を下げて回ったものだった。
課長に怒られて喫煙室で凹んでた私を飲みに誘ってくれたものだった。
思い出が回る。
記憶が交差する。
私は少しだけ泣いて、正輝の思い出を頭から追い出した。