run and hide
胸の中で手を合わせる。
ごめんね、正輝。わざわざ近くもない私の家まで来てくれてこの仕打ちは自分でもどうかと思う。・・・だけど!!!
本気で辛くなってくるので、どうか、私のことは忘れてくれたまへ。
もう、神様、いや、悪魔にだって祈る心境だった。お願いですから、どうか―――――――
ストレートで彼を、わすれさせて。
罪悪感で、一日仕事に手がつかなかった。
消費したタバコの数、2箱。朝8時から夕方4時までで。・・・・立派なヘビースモーカーだよ、私・・・。
でもでも、と一向に進まない企画書を前にして、デスクに座ったままで拳を握り締める。
何回も同じ事を思うのだ。
もう、この恋は手放して、一気に新しい私にむかって駆け抜けるべきだ。
正輝が私のことを友達としてしか見てないことは、ハッキリしている。泣けないくらいにハッキリしている。まさか追いかけてくるとは思ってなかったが、それでも友達の地位から抜け出してないのは判ってる。
ならば、もういらないんだから。
ぐだぐだと抜け出せない思考にまた陥ってしまった。
すると、ポン、と頭に雑誌が落下してきた。
「こら、梅沢」
けだるく見上げると、転職組みでこの会社に同時に入った、同期の亀山が立っていた。
「・・・・何よ」
私の低い声に、眉間に皺をよせた亀山は不機嫌そうに言った。
「お前、一日顔怖かったぞ。何があったかしらねーけど、プライベートを仕事に持ち込みすぎ。もう仕事にならないんなら、帰れば?」
うう・・・言い返せない。今日の私は本当に使い物にならなかったから、仕方ない。