run and hide


 だから、好きになった女がいると付き合うまではいつでもいける。ちゃんと自分からアプローチもするし、努力もする。

 ただし、続かない。

 私はグラスを傾けてキラキラと光る素敵な液体を喉に流し込む。

 正輝が女に振られるわけ、それは、優しすぎる性格にあると思っている。

「・・・大切にしてたんだ。でも、もうあなたとは会わないだってさ」

 拗ねた口調でカウンターに両腕をのせて顎を沈める。

「泣き言は止めて。せっかくのお酒が不味くなる」

 私は彼の方を見もしないで、マスター、と声をかける。

「お代わり。それと、ポッキー」

 マスターが頷いて私の為に素敵なジン・トニックを作り始める。

「・・・お前、本当にキツイなあ~・・・」

 隣の凹み野郎が私に言った。

 じゃあいちいち呼び出さないでよ、恋が一つ終わるたびに。

 私はハニーベージュのストッキングに包まれた足を高い椅子の下でぶらぶらさせる。そして、彼の方を見もせずに言った。

「デートは自分で予定を決めずに相手に任せたんでしょう」

「うん」

「昼ごはんも晩ご飯も、君が食べたいもので、なんて言ったんでしょう」

「・・・うん」

「プレゼントは一緒に選びに行こうなんてしてたんでしょう」

「―――――・・・何でわかるんだ?」

 正輝は体を起こして私を見た。目を丸くしている。


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