run and hide
パッと携帯を耳から離す。ディスプレイを確認。知らない電話番号だ。そりゃそうか、正輝の電話は拒否してるハズ。でも・・・この声は、正輝。
携帯の受話器から、わー、切るなよ!!と正輝の大きな声が聞こえていた。
仕方なく、私はまた耳に携帯を当てる。
「・・・・叫ばないでよ。うるさいわね」
歩きながら話したら、電話の向こうが落ち着いた。
『俺、携帯変えたんだ。出てくれてよかった』
・・・・成る程。電話番号を変えたってことね。蓋をあけてみれば簡単なことだった。
「用がないなら切るけど」
体の底からぐぐっと、実は喜びが沸き上がってきつつあった。でも私は強固にそれを無視する努力をした。
『・・・・お土産、渡したいんだ。昨日まで東北に5日間も出張でさ』
正輝の声が流れてくる。と、同時に、出張だったのか、なら追いかけっこは無理だよね、と安心してしまった気持ちに気付いてうろたえた。
すぐに返事が出来ずに立ち止まる。途方にくれて、空いてる片手で口元を押さえた。
・・・・・私ったら、もう・・・。
『翔子?土産もダメか?―――――そうだ、お見合いしたんだろ?その話も聞きたいし』
声が小さくなったと思ったら、いきなりまた弾んだ声でそんなことを聞く。
――――――ちっくしょう・・・。
私はぐっと唇をかみ締めて、前を向いた。