run and hide
酒と煙が欲しいぜ。でも今はない。素面でこの局面を乗り切る必要がある。
頭の中で南無阿弥陀仏と繰り返し唱える。イメージでは正輝を羽交い絞めにした挙句投げ飛ばす自分がいた。
私はゆっくりと深呼吸を二回して、目を閉じた。
「・・・お土産ありがとう。でもちょっと私、熱があって。うつしてもダメだしまた今度でいい?」
普通の声で、ほどほどに抑揚もつけて言った。
よく頑張ったと自分でも思った。
『熱?そりゃあしんどいよな。悪い、そんな時に。帰ってゆっくり寝てくれ』
正輝の声から心配しているのが伝わる。
こんな時には強引に行けない。それがあなたの優しいところで、女には物足りないところなんだよ、と言ってやりたかった。
じゃあ今から会いに行くよ。俺が看病する。
・・・・そう言って欲しかったんでしょう、今までの元カノさん達は・・・。
「うん、そうする。じゃあ、また」
私はそう言って、ヤツの返事も待たずに電話を切った。
・・・・電話、また着信拒否しなくちゃ・・・。
もう、いつまでもつか判らないよ、この状況・・。
いっそ「あんたが好きなんだよ!」って目の前で絶叫してみるか!?そしてちゃんと玉砕する?!
リアルなイメージで、ガタガタと崩れ行く私の銅像が浮かび上がって思わず頭を強く振る。漫画だよ、これじゃまるで!