run and hide
私はため息をついた。
お礼を言ってグラスを受け取り、一口飲んで口を湿らせる。
全く、素敵なお酒でもなきゃやってられない。
「・・・正輝は、それが大切にしてるんだって思ってるんでしょうけど、女にはそう思えないってことでしょうが」
「え!?」
本当に判らないんだろうなあ~・・・。私は鞄をあさってタバコとライターを取り出す。
慣れているマスターは、さりげなく灰皿を置いてくれていた。
「・・・・自分のやりたいことや食べたい物がいつでもハッキリしている人ならそれも喜ぶでしょう、自分のペースで物事が進むから。だけど、あんたが選ぶ女は皆チヤホヤされるのに慣れているようなモテ子ばかりでしょ?彼女に選択権ばかり押し付けるのは、ガッカリさせるだけで大切に扱われたとは思ってないわよ、多分」
紫煙を吐いた後で一気に言った。
正輝は唖然としてそれを聞いていた。
ショックを受けているらしい。片手で目をごしごしと擦っていた。
「・・・・俺、彼女が喜ぶと思って」
私は音をたててポッキーを食べる。その音で彼の弱音をかき消すのだ。
あー、もう。イライラする。
以前はちゃんと話もきき、ヤツの気が済むまで愚痴も聞いてやったのだ。
だけどさすがに4年もしてりゃあ私も優しさは下落するってもんである。