run and hide
「デートくらい自分でコーディネートしなさいよ。自分を喜ばせようとここまで考えてくれたっていうのが、ぐっとくるところなんじゃないの?」
他の女はね。私は自分の好きにさせてくれるのがいいから、何にも決めてない男の方がいいんだけど―――――――
チラリと正輝を見るけど、もう彼は昨日まで付き合っていた女との記憶に没頭してしまってた。
あー、もう。ムカつく。
私はグラスをあける。マスターがこっちを見ている。頷いた。
「・・・本当だ。俺、彼女がやりたいことをして笑ってくれる方がいいと思って、何がしたい?って聞いてた、かも・・・」
悄然と肩を落としながら、正輝は呟く。
ほら、ね。私は判ってるんだから。
あなたの事は、よく知ってるの。
その他の女が物足りないと思うような優しい性格も。本気で相手のことを考えて色々譲ってるんだってことも。
私は知ってるのに――――――――
彼がぽつぽつ彼女とのことを話すのは、氷を噛み砕く音とポッキーを食べる音で消してやった。
もう4年ほど、こうやって一緒に飲んでいる。
正輝が恋を失って私を呼び出し、自分の気持ちを整理する。私は溜まってる仕事を更に翌日に回して駆けつけ、毒舌を吐きながら彼に付き合う。
そして翌日、二日酔いで痛む頭を押さえながら膨大に積み上げられた書類を裁きつつ、ため息をつくのだ。
彼はまた、その内新しい恋を見つける。