run and hide
これではいかんとテーブルの上に置きっぱなしのビールを引っつかんでがぶ飲みした。
炭酸が喉にしみて、勢い余ってむせた。ごほんごほんと咳き込む。
かなり苦しくて、涙目になりながらソファーにうずくまった。
・・・・・いったああ~い・・・。バカだわ、私。何してんの。きっつい現実だあ~・・・。
「―――――――大丈夫か?」
一人で妄想世界で暴れている内に正輝が戻ってきてしまった。うずくまって咳き込む私の背中を撫でてくれる。
「だ・・・だいじょっ・・・ゴホ」
「気管に入ったのか?」
更に数回空咳をして、やっとマトモに戻った。
「あー・・・苦しかった」
涙目で見上げると、スーツに着替えた正輝が心配そうに覗き込んでいた。ネクタイはせずに胸ポケットに突っ込んである。その開いた襟元に色気を感じてしまった。
「・・・乾いてた?」
聞くと、ヤツはうんと頷いて立ち上がった。
「俺、帰る。結局濡れちゃって悪かったな」
・・・・・・・・帰る、のね。やっぱり。
私はビールでむせたせいにして、新しく目を潤ませた。そしてごしごしと腕でぬぐって立ち上がった。
「正輝が謝ることないでしょ。私こそごめんね。あ、ピザ代払うから待って」
鞄を持って玄関へ向かう正輝を追いかけた。