run and hide


「大丈夫、明日には」

「そんな簡単にいけるなら、何で今までそうしなかったわけ?」

 私はゆっくりと亀山を振り返った。

 ん?と私を叩いた雑誌を丸めて肩にのせた亀山が首を傾げる。

「・・・・・私は象じゃないんで」

「は?」

「簡単には冷蔵庫に入れれないのよ」

 はあ~・・・と盛大なため息を吐いて、亀山は両目をぐっと閉じた。

「・・・もういいよ。じゃあ、とにかく明日だ。それで無理なら課長に言ってお前外して貰うぞ」

「うす」

「判った?」

「うす!」

 まるで体育会系ののりで返事をして、私はタバコを引っつかみ立ち上がった。

「・・・どこいくの、お前」

「屋上!」

 足音荒く事務所を出る。後ろで亀山が、一日休憩してんじゃねーかよ!!って怒鳴ってたけど、黙殺した。

 エレベーターのボタンを押して、イライラと階数を上がってくる明りを見上げた。


 あの嵐の晩、正輝から電話が来た。

 すでに緊張状態で待ち構えてた私は、その落ち込んだような第一声に、固まった。

『・・・・翔子、好きな男がいるんだよな。俺、邪魔してるんだって気付いた』

 ――――――へ?

 私は一瞬混乱した。


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