run and hide
だって、想像してたのは「すぐにでも翔子に会いたいよ」的な甘い言葉だ。「抱けばよかった」とか、そんなの。
だけど現実に、彼が私にくれた言葉はそれだった。
『俺が翔子を意識したって、お前が俺を男として見てなきゃ意味ねーよな。俺ってバカだよな。本当にごめん、色々悩んだんじゃねーかと思う』
・・・・待て待て待て待て。
何言ってんの、この人?私はあんたを男としてしか見てねーんだよ、4年も前からよ!お前がバカ野郎なのは判ってんだよ!確かに悩んだよ、色々と!!
心の中ではいちいち突っ込めたけど、呆然とした私は言葉には出来ないまま。
『・・・・迷惑かけた。もう、邪魔しないから』
そう言って、私が我にかえり、違うの正輝――――と声を出せた時には電話は切れていたのだ。
・・・・・・・切れた・・・・。
私は呆然と座り込んでいた。
マジで?どうしてそうなるのよ。ちゃんと働かないこの口にもムカつく。ご飯食べるだけがあんたの役目じゃないぞって口を自分で捻って痛かった。
「・・・・何で、こうなるのよ・・・」
私は一人で自分の部屋で座り込む。
相変わらずの外は嵐。
あああ~・・・・・神様の意地悪・・・・。私があんたに何をした。一度でいいから地上に降りてきてくれ。そして膝を突き合わせて話し合おう。こんなにこんなに頑張って、くれたご褒美がこれかい!やっぱりさっきのチャンスを逃したのが痛かったか!
取り合えず、目についたティッシュペーパーのボックスを壁に向かって放り投げた。ついでに飲み終えたビール缶も投げつける。
29歳、梅沢翔子、今日こそ本当に恋を失った―――――