run and hide


 それからの私は、亀山への申し訳なさも手伝って、遅れを取り戻すべくご飯も食べずに全力で残業した。

 こんなに働いたのは久しぶりだった。

 がむしゃらにデスクと電話とパソコンとファックスに齧り付いて、終電で自分の部屋に戻ってきた。

 ああ・・・疲れた。朝からちゃんとやれば夕方までに終わるのに・・・凹んでしてなかったからこんな時間じゃん・・・。

 明日休みだけど、こりゃ出勤だよね。そんくらいしないと、遅れは取り戻せない――――――

 何てことをぐだぐだ考えながら部屋に戻ると、私の部屋の前に誰かが居た。

 まるで締め出しくらった子供みたいに、座り込んで寝ているようだった。

 ・・・・ちょっと・・・止めてよ、人ん家の前で。誰よ~?警察呼んだほうがいいのかなー・・・・と思いながら近づくと、何と正輝だった。

「あら、ま」

 小さく呟く。

 正輝は酔っ払ってるようだった。目じりが赤く染まって、ドアに背中と頭をつけて寝てしまっている。

 ・・・・・うーん。

 私はそっと近づきながら考えた。

 会いたくなかった男が自分の部屋の前で寝ている。これにどう対応したら、一般常識なんだろう・・・・。

「・・・正輝」

 一応呼んで、軽く肩をゆすってみた。

 ううーん・・・と唸りはするけど、起きる気配なし。私はため息をついて、今度はマトモにやつを起こし始めた。


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