run and hide
「おーい、こら!起きて!こんなところで寝てたら風邪引くでしょうが!正輝!!」
深夜にも関わらずそれなりの大声を出して正輝の肩を強く揺さぶった。
「・・・・あれ・・・翔子?・・・おかーえりー・・・」
寝ぼけた正輝が半目を開けてぼそぼそと言った。
もう、と私はヒールでヤツを蹴っ飛ばし、ドアを開ける。重たい体を渾身の力で引きずって部屋の中へ入れた。
ちょっとお。私は疲れてるのよ、くたくたなのよ、ボロボロなのよ!何て労働させるのよ、もう今日も終わるって時に!!
「・・・ほーら!!起きなさいって!!」
耳を掴んでひっぱると、いたたたたと喚いて遂に正輝は目を開けた。
「いってえ・・・お前、酷いな」
「褒められると照れるわ。何してるの、私の部屋の前で?」
仁王立ちになって問い詰めると、目をこすりながらのんびりと正輝が言った。
「・・・電話・・・・繋がらなかった・・・」
「あ」
そりゃ、着信拒否にしましたから、とは言わない。
「だから、来た」
ふう、と息を吐いて、先ほどよりはちゃんとした瞳で、彼は立つ私を見上げた。
「・・・・話、しなきゃと思って」
・・・・やっぱり、追いかけるのが好きなのかしら、この男。私はこっそりそんなことを思った。
「・・・話っつったって、こんな状態じゃ無理でしょうが。今から帰れともいえないし・・・」
私が終電で帰ってきたんだから、タクシーしかない。だけど今からそれを手配する元気は私にはない。