run and hide


「・・・おはよ」

 私の部屋には存在するはずのない低い声が耳の中で跳ねて、私はがばっと起き上がった。

「はい!?」

 条件反射でかけ布団を巻きつけて後ずさると、同じベッドに寝そべって肘をつき、顎を手のひらに乗せた正輝がすぐ近くで私を見ていた。

「・・・・・」

「そんなに驚かなくても。ここに寝かせてくれたの翔子だろ?」

 私の反応に苦笑している。

 あちゃ~・・・・。何てことだ。

 昨日の記憶が一気に蘇り、私は片手で額を叩いた。

 ・・・やつより先に起きるハズじゃあなかったっけ、私!?何か・・・この感じだと、寝顔もがっつり見られたと考えるのが妥当よね・・・。

「俺、あんまり昨日の記憶がないんだけど。電話通じないから自棄になって酒飲んで、ここへ来て、それからどうなったんだ?」

 私はため息をついて応えた。

「・・・玄関先でべろべろになって座ってたから、うちに入れて寝かせた」

「それは悪い。起きてビックリした。どこだ、ここ?って」

 チラリと壁の時計を見ると、まだ5時を越えたところだった。

 ・・・・・何でこんなに早起きなの。

 私はまたかけ布団を被ると正輝に背中をむけて横になった。

「・・・・早すぎ。もうちょっと寝かせて」

 もう何でもいいや。どうせスッピンは前にも見せてるし、寝顔だって見られたんなら今はまだ睡眠が必要だわ。


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