run and hide


 正輝はベッドから起き上がると言った。

「申し訳ないけど、俺シャワー借りてもいい?体が気持ち悪くて」

「・・・どうぞ」

 どうぞ、部屋から消えてください。朝から君に気を配る余裕はないんです、私。

 ありがと、と言って正輝は寝室を出て行った。

 私は布団に包まったまま、ようやく理解し始めた頭と心臓をなだめていた。

 ・・・・・寝るのよ、私。

 そしたらきっと正輝は睡眠中の私に遠慮して帰ってくれるに違いない。

 私は今日も仕事に行き、業務の遅れを取り戻し、ヤツのことを頭から追い出す努力をするの。

 もう間違っても追いかけたりしないんだから――――――・・・・


 昨日の疲れが残ってた上に早起きだったので、心配する必要なんてなく簡単に2度寝出来た。


 髪を触る指の感触。

 誰かの声が聞こえる。

 ・・・ああ、なるほど、私はまたいつもの夢の中なのね。

 正輝の夢。彼が振り返って、ここに居たんだと笑ってくれる優しい夢。

 あの綺麗なブルーの海をバックにした景色で・・・

「翔子、起きて」

 何でちゃんと声が聞こえるんだろ・・・・。超リアルな夢だわ~・・・やった、ラッキー。これで本当に正輝が私を見てくれたら言うことなしなんだけどなあ~・・・。


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