run and hide
「・・・・くっ・・・」
ついに、噴出した。
すると驚いたことに、つられたように翔子も笑い出した。
「あはははは」
もう、止まらない。スイッチが入ったみたいに、ずぶ濡れでバカ笑いをしていた。
雨で溢れたコンクリートの地面を手で叩いて笑いあった。
そしてやっと動き出し、とにかく翔子のアパートまでたらたらと歩いていく。相変わらず笑いは止まらない。
ここ最近で、こんなに笑ったこと、なかった。
玄関に濡れた持ち物を置くと、先にどうぞとシャワーを浴びさせてくれた。
熱いお湯で、体が冷えてしまっていたことに気付いた。翔子は大丈夫だろうか。先にお風呂入ってもらったら良かったか?でもここは、俺の家じゃないしな・・・。
手早く洗って出ると、タオルと着替えが用意されていた。
付き合いは長いがお風呂を使わせてもらったのは初めてだ。香りや小物が翔子の雰囲気で溢れていた。
「・・・・」
男物のTシャツを思わずじっと見てしまった。
・・・誰のだろ。元彼かなんかかな。でも、あいつから男の話は聞いたこと、ないぞ。仕事が忙しいとデートの暇もないって言って、いつでもフリーの身分を楽しんでいるようだったのに。
でもさっき、駅前で言い争いになったときに、好きな男がいるのかとつい聞いたら、いるって頷いたよな?もしかして、聞いたことはないけど長い片思いかなんかをしてるんだろうか―――――――
俺、いつも自分の話ばっかで、翔子の話を聞いてやれてなかったかも。俺が知らないだけで、翔子は恋愛で悩み事があるのでは・・・・。