run and hide


 裸のまま思わず考え込んでしまって、ハッとした。

 いやいや、今、俺が気にすることじゃないよな。

 とにかく、裸で翔子の前をうろうろするわけにはいかない。有難く着させてもらうことにした。

 早く交代してやらねばと台所に行くと、部屋着に着替えたラフな格好の翔子はコーヒーを入れながら、振り返った。

「ごめん、お先」

 声をかけると、なぜか固まってしまっていた翔子がパッと視線を逃がした。

「こっ・・・コーヒー淹れといたから飲んでおいてね。服は乾燥機に入れるから、乾くまでしばらくそのままでいて。じゃあ私入ってくる!」

 そして早足でお風呂にいってしまった。体、相当冷えてたんじゃないかな・・・。

 さすが翔子、気がきく。早速淹れてくれたコーヒーを飲んでいると、腹が鳴って空腹を告げた。

 ・・・そうか、もう7時半だもんな。

 人んちの台所で勝手にご飯作れないし、翔子には翔子の都合があるだろう。でも、何とかできないかな、と頭をめぐらせると、まだ読まれてない今日の朝刊に挟まれているチラシが目に入った。

 にんまりと笑う。

 ピザ。確か、翔子はすきだったはず。これを注文しておこう。

 何とか無事だった携帯電話を取り出した。

 やっぱり女性でそれなりに時間が掛かっていたので、翔子が上がってくるまでテレビを勝手につけてみていた。

 だけど、全然頭に入ってこない。

 何か俺が翔子の部屋で寛いでるのが不思議で、妙にそわそわしてしまった。


< 77 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop