run and hide
いつも美味しいお酒をありがとう、と声をかけて、私は歩き出す。後ろで、翔子、と呼ぶ声が聞こえたけど、私は振り返らずにドアを閉めた。
外に出ると同時に視界が揺れた。
・・・・ああ、畜生・・・。やっぱり私も、酔っ払ってる・・・・。
名前で呼び合うほどに仲が良かった同期だった。
私は少しずつやつに惹かれていったけど、やつはいつでも他の女に惚れた。
キャリアアップにかこつけて、やつがいる会社を離れた。
だけど縁は切れなかった。
いつか―――――――
・・・・いつか、こっちを向いてくれるかも。
そう思ってきたけど。
昨日の電話での呼び出しで、決めたのだ。今回が『振られたから慰めて』のいつものパターンじゃなかったら、自分から告白しようと。
覚束ない足取りでフラフラと駅に向かう。
もう、ヒールが邪魔だったら・・・脱いで走るか?いっそのこと。
そしたらストッキングもめっためたになるってーの、もう・・・・私のバカ。
笑おうとして失敗した。
変な表情のまま、駅の中に入っていった。
明日に回した大量の仕事が、私を待ってる。
帰って寝なくては。
眠れたら、いいんだけど・・・・