run and hide
2、スムーズに事が運ばない
あまり記憶が確かではないけど、昨夜もちゃんと私は自分の部屋に帰ったようだった。
頭に突き刺さる目覚まし時計を殴って止めたあとソファーに放り投げた。
「・・・起きますよ、起きるったら・・・うるせーよ・・」
ぶつぶつ言いながら目覚まし時計に八つ当たりをして体を起こす。
あー・・・喉、渇いた。
あの素敵なジン・トニックはそれでもガッツリとアルコールなので、水分をとっていく。飲んでるのに体が乾くって、一体どういうことよ??
私はどこかのホラー映画みたいに冷蔵庫まではっていって、ミネラルウォーターをがぶ飲みする。
はあ~・・・・生き返った気分。喉を滑り落ちる水の感触にうっとりした。
さて・・・と床にぺたんと座ったままで、自分の部屋を見回した。
ずっと長い間くすぶってた微妙な恋を捨てた私だ。
この胸は痛むけど、現実的に対処しよう。
よかった、べろべろに酔っ払った時もたくさんあったけど、ふざけてでも正輝とキスとかアレとかやってなくて。忘れるのも時間の問題よね――――・・・
と、そこで私は、壁にかけてある充電器の上で携帯が光ってるのに気付いた。
よいしょ、と号令をかけて立ち、ぺたぺたと音をたてて歩いていく。
メールだ。
受信画面で確認すると、たった今、頭から追っ払ったはずの男の名前が光っている。
『翔子、ちゃんと帰ったか?昨日は悪かった。忙しいのに呼び出して自分のことばっかりで。
もう俺に会わないって言うの、驚いた。友達もやめちゃうってことか?俺、そんなの嫌だ』