サボテンの恋
「雨降ってちょうどいいかな!こんなスーツ、濡れちゃえば…」
「強がらないでください」
ロビーに低くやわらかい声が響く。
小春は石田を見上げると、石田は真面目な顔でこちらを見ていた。
「べ、別に強がってなんか…」
「だったらなんでスーツの裾、ずっと握り締めてるんですか」
見ると手は白くなっていて、かなり力いっぱい握り締めていたのだと気づいた。
「俺、知ってますよ。企画リーダーに選ばれてから、川上さんが毎日スーツ着てくるようになったことも、いつも遅くまで残業してたことも。みんなに厳しいこと言うのだって企画に一生懸命だからって…俺、知ってます」
無理ばっかりしないでください、と言う石田の目はとても優しくて、小春の中にあった重い鉛みたいなものがスッと消えていくような感じがした。
「強がらないでください」
ロビーに低くやわらかい声が響く。
小春は石田を見上げると、石田は真面目な顔でこちらを見ていた。
「べ、別に強がってなんか…」
「だったらなんでスーツの裾、ずっと握り締めてるんですか」
見ると手は白くなっていて、かなり力いっぱい握り締めていたのだと気づいた。
「俺、知ってますよ。企画リーダーに選ばれてから、川上さんが毎日スーツ着てくるようになったことも、いつも遅くまで残業してたことも。みんなに厳しいこと言うのだって企画に一生懸命だからって…俺、知ってます」
無理ばっかりしないでください、と言う石田の目はとても優しくて、小春の中にあった重い鉛みたいなものがスッと消えていくような感じがした。